「通信文化新報」特集記事詳細
2024年04月08日 第7243号
【主な記事】住民自治組織の事務受託
島根県雲南市 大東久野郵便局
ローカル共創イニシアティブ
日本郵政の増田寛也社長は3月26日に開催した定例会見で、中期経営計画「JPビジョン2025」に掲げる、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を実現するための取り組み「ローカル共創イニシアティブ」第3期を4月から実施すると発表した。2022年4月から開始した同事業では、すでに成果が現れており、3月に取り扱いを開始した奈良市での買い物サービス「おたがいマーケット」に加え、4月1日からは新規事業として島根県雲南市で郵便局が住民自治組織の事務局サポート業務を受託する実証事業を開始した。
公募により選出された日本郵政グループ会社本社の若手および中堅社員を2年間、地域で活躍するローカルベンチャー企業や自治体に派遣し、地域における新規ビジネスの創出を目指すもの。経済の活性化、関係人口の創出、自治機能の維持・向上などに資するサービスに精力的に取り組んでいる派遣先を選定しており、2022年4月に第1期生を派遣している。
第3期として、4月から新たに公募で選出された社員6人を、栃木県宇都宮市・株式会社ABEHOLIC、島根県大田市・一般社団法人石見銀山みらいコンソーシアム、島根県海士町を中心とした隠岐諸島・交交(こもごも)株式会社、高知県高知市・合同会社シーベジタブル、熊本県南小国町・南小国町(地域活性化起業人)/株式会社SMO南小国、宮崎県日南市・株式会社ことろど―の6か所に派遣する。
これまで第1期、第2期で10人のグループ社員を7地域・9組織に派遣して、現地関係者とともに新規ビジネス創出に向けた挑戦を行ってきた。第1期については3月末で任期を終了する。
買物サービスや事務サポート業務受託等に成果も
具体的な成果としては、3月14日に発表した奈良県奈良市で日本郵便の郵便局と配達ネットワークを活用して、地域コミュニティの強化を図る新しい買物サービス「おたがいマーケット」の提供を開始した。
さらに、島根県の雲南市で郵便局が地域の住民自治組織から営農広域組織の事務局サポート業務を受託する実証事業を4月1日から開始する。農業等の担い手不足が深刻な問題となりつつある地域で、地域に根差した郵便局が営農広域組織の運営委員会の運営補助や行政提出書類の作成提出などの業務を行うことによって、課題解決をサポートし、郵便局と地域コミュニティとの協働実現を目指していく。
具体的には、雲南市大東町久野地区で、地域自主組織である久野地区振興会(落合孝司会長)が新たに設立する営農広域組織の事務局のサポート業務を、大東久野郵便局が受託する。受託業務に係る費用については、中山間地域等直接支払交付金の集落協定広域化加算による加算金を原資とする。
この加算金は、農業の生産条件が不利な地域で農業生産活動を継続することを目的として国および地方自治体から交付される中山間地域等直接支払交付金のうち、広域で集落協定を締結し将来の集落維持に向けた活動を行っている場合に加算されるもの。
このように派遣者を起点に派遣先企業の知恵と郵便局を活用した共創事業が生まれている。この他にも第1期、第2期を起点に具体化を進めている企画もある。
増田社長は「急激な人口減少や少子高齢化、気候変動など変化の激しい時代の今、このような協業による取り組みを積極的かつ主体的に行うことにより、持続可能な地域社会づくりに貢献できる新たな役割を模索してまいりたい」と述べている。
〈営農広域組織〉営農集落を単位として農業生産過程の全部または一部について共同で取り組む「営農組織」の活動を、より広域範囲で行う組織。現在、久野地区内に7団体ある営農組織を、2つの営農広域組織に集約することで、これまでは各営農組織が個々に行っていた事務等を営農広域組織に一本化し、効率化を見込む。
>戻る