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2024年05月20日 第7249号

【主な記事】

前島密翁 没後105年
墓前祭 偉業を称え次代に継承

本堂の前で参列者の皆さんが記念撮影


 没後105年となる「前島密翁墓前祭」が4月27日に神奈川県横須賀市芦名の浄楽寺で執り行われた。「日本文明の一大恩人前島密翁を称える会」(北風雄会長/元・松輪局長)が主催し、毎年開催されている。北風会長、𠮷﨑庄司名誉会長(元・鎌倉材木座局長)ほか称える会、長谷川英晴参議院議員をはじめとする政界関係者、前島翁生誕の地・新潟県上越市の「前島密翁を顕彰する会」(滝澤一成会長)、日本郵政グループ・OB、全国郵便局長会の会員・OBなど約200人が参列した。明け方から小雨が降り注いだものの開会時には上がり、参列者は心を新たにして前島密翁の精神の発展・継承を誓い合った。


 山田洋一副会長・事務局長(元・横須賀森崎四局長)が司会を務め、「山が笑い、木々の緑が目に染みる、この季節に墓前祭を開催できることを喜びに思っている」と開会を宣言した。
 はじめに北風会長が「昨年はコロナ禍の中で5類になる前で、手探りしながら開催したのを覚えている。今年はそうした心配がなく安堵している。唯一心配していた雨も上がり、これもひとえにご参集いただいた皆さま方のおかげと感謝」とあいさつした。
 長谷川参議院議員は「前島密翁の墓前祭に参列することができ身も心も引き締まる思い。郵政事業も民営化して、さまざまなことがあると思う。大切なことは前島密翁が立ち上げた事業の歴史を振り返り、何のために郵政事業はあるのだろうかという原点に帰ることではないか。政治も郵政事業も『人のために良かれと願う心を常に持てよ』という言葉通りにあるべきではないかと思う」と述べた。
 上越市の中川幹太市長は「令和7年には密翁生誕190年を迎える。これからも主体的に取り組んでいる皆さまとともに、密翁の誕生の地であることを誇りに思い、功績を後世へ確実に伝えてまいりたい」と述べ、「『縁の下の力持ちになることを厭うな、人のために良かれと願う心を常に持てよ』という密翁の言葉通り、人のために、社会のためにとの崇高な理念を持って、地域発展に向け引き続き活躍されるよう期待」と語った。
 公務のため不参加となった横須賀市の上地克明市長のメッセージを、井上透市長室長が代読した。「墓前祭は単に偉大な先人を讃えるためだけではなく、前島翁の功績を振り返り、未来への学びの場とする貴重な機会。密翁の意志を引き継ぎ、精神を今に伝え、次世代に継承していくことが課せられた使命。晩年、この芦名の地で穏やかな余生を過ごされたと伝えられている。私もこの地から、密翁とともに富士を愛でつつ、偉人の顕彰を続けてまいりたい」。
 前島密翁を顕彰する会の滝澤一成会長は「前島翁が活躍されたのは30歳代だった。郵便制度創設提言をしたのは明治3年で、まだ35歳だった。盟友であった大隈重信は3歳下だった。伊藤博文は20歳代半ばだった。密翁は明治政府の中で頼れる兄貴として存在したのではないか」と述べ、「そうした存在がどのように作られたか。10代のころから日本中を周り放浪の人生を20代に送った。その経験があのような偉大な人物を作ったのではないか。青年前島密、頼れる兄貴という視点を持って研究を進めてまいりたい」と語った。
 本堂前での記念撮影を終えた参列者は、高台にある墓前へ。浄楽寺の土川妙真住職が読経する中、北風会長をはじめとする称える会の役員、長谷川参議院議員、中川市長、日本郵政グループ関係者・OB、全特の役員、神奈川県南部地区会をはじめとする県内の局長会とOB、関東地方会の役員らが、焼香し手を合わせた。
 佐島マリーナに場所を移しての午さん会では、山田副会長が司会を務め、北風会長が「会場の前には相模湾がある。前島翁も、この相模湾を見ながら余生をゆっくりと過ごされたのではないか。皆さまも、ゆっくりと時間を過ごしていただければ幸い」と開会のあいさつを行った。
 通信文化協会の髙橋亨理事長は、参列者に配られた書籍「ゆうびんの父」(前島密翁の評伝・門井慶喜著)を手にし、本の一節を諳んじながら前島翁の足跡や偉大さを説き、郵便事業・特定郵便局の原点、そして未来について語った。
 「前島密翁がどんな人生を送ったのかを理解するためのキーワードが旅、もうひとつが情熱」と解説し、「その反面、作者のことばではないが、前島翁は超現実主義者だった」と説く。「(『縁の下の力持ちになることを厭うな。人のためによかれと願う気持ちを常に持てよ』との)前島密翁の理念が今の郵便局に受け継がれている一方で、郵便局のみならず本社、支社も含めてマネジメントする人間が忘れてはならないのが、この超現実主義なのだろう」と語った。
 日本郵便南関東支社の山田亮太郎支社長は「前島密翁が創業した事業を受け継いでいるが、諸先輩方の尽力で継続しているこの事業を、郵便局ネットワークをしっかりと維持しながら、お客さまに利用していただけるように、ますます努力してまいりたい」と語った。
 新倉繁大楠連合町内会長が「前島翁の意志を大事にしていきたい」とあいさつした後、称える会の二本木朝一副会長(元・横須賀本浦局長)の発声で献杯した。午さん会の出席者はおよそ100人を数え、出席者は和やかに団らんした。
 岩澤正純副会長兼事務局次長(元・武山局長)が締めのあいさつを行った。参加者は、前島密翁の創業の精神を胸にして帰路についた。


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