「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2024年05月27日 第7250号

【主な記事】

中期経営計画見直し
日本郵政グループ 成長分野へ資金、人材を配分

 日本郵政グループは、中期経営計画「JPビジョン2025」を見直し、2024年度および2025年度の2年間を計画期間とした「JPビジョン2025+(プラス)」を策定した。日本郵政の増田寛也社長が大手町の本社ビルで5月15日に公表した。2025年度主要目標をROE4%以上、連結当期純利益5700億円とするなど、成長ステージへの転換を目指し、今後の戦略を見直す。成長ステージへの転換実現のために策定した3つのドライバーの一つとして「郵便局」を位置付け、郵便局のサービスの充実化や柔軟な営業体制の構築など、生産性の向上を図る。
 
 「JPビジョン2025」の公表から3年が経過し、物価上昇やデジタル化の進展などグループを取り巻く環境が大きく、速く変化している。3年を目途に計画を見直すことを前提としていたことを踏まえ、経営環境の変化に対応するため、JPビジョン2025+として策定した。
 業績面については、ゆうちょ銀行株式の売却(89.0%→61.5%)による影響など、利益の減少傾向が続いている。増田社長は、「この状態が続いた場合は、安定的な経営に支障をきたす厳しい状況にあると認識している」と述べた。今後も、グループが健全な事業運営を行い、「共創プラットフォーム」を実現するためには、さまざまな課題を克服して、成長ステージへ転換することが必要となる。
 成長ステージへの転換のためには、転換実現のための3つのドライバー(①資源配分②郵便局③人材・システム)と取り組みの3本柱を策定した。
 ①資源配分=成長分野と考えている物流分野、不動産事業へ資金や人材をより積極的に配分できるように仕組みを変えていく②郵便局=より地域の実情に応じた個性ある郵便局へと進化することを目指して、郵便局ネットワークの価値魅力を向上させるために、郵便局のサービスの充実化や柔軟な営業体制の構築を行う。顧客の利便性を踏まえた店舗の最適配置、窓口営業時間の弾力化などによって、生産性の向上を図っていく③人材・システム=グループの事業活動を行う上で最も重要な人的資本への投資を、成長に向けた投資のひとつとして位置付け、社員体験価値向上に取り組むとともに、DXの推進などによって、人口減少や要員不足などの環境変化に適用可能な柔軟で強靭なシステムを有した組織へ変革をしていく。
 ドライバーの変革を通じて、2025年度は、当初設定した利益目標を上回って達成する計画。連結当期純利益は、当初目標5100億円だったものを5700億円に修正。ROEは4%程度だったものを4%以上に見直す。
 取り組みの3本柱は①収益力の強化②人材への投資によるEX(社員体験価値)③DXの推進等によるUX(システムやサービスを利用するユーザーがその利用を通じて得られる体験価値)―の向上。
 ①収益力の強化=物流と不動産事業を成長分野として捉え、経営資源を積極的に投入していく。物流分野は、ヤマトグループなどとの協業の深化に加えて、強靭な輸配送ネットワークの構築、差出・受取利便性の向上を通じて、荷物収益の拡大を目指す。セイノーグループとの業務提携など、幹線輸送の共助努力を通じて、物流課題の解決に取り組んでいく。
 不動産事業については、主に駅前の好立地にある郵便・物流拠点の再編と連携した不動産開発等による安定的な収益の確保に努める。郵便局窓口事業については、業績見通しが厳しいことから、社員スキルの強化、営業専門人材の育成による営業力の強化、顧客や地域のニーズに応じた日常生活をサポートするための商品・サービスを充実させるとともに、窓口のオペレーション改革も推進する。
 ②人材への投資によるEXの向上=労働人口の減少にともなう人手不足や価値観・ライフスタイルの多様化など、外部環境の変化に対応して、優秀な人材を確保し育成する必要があるため、EXを通して、誇りとやりがいの向上や同質性の高いクローズドな組織から柔軟で多様性のある組織への転換に取り組んでいく。
 事業戦略と連動した柔軟配置の実現はもとより、採用手法・採用対象の多様化が必須であることから、外国人労働者の採用については、特定技能の導入検討などに取り組む。
 ③DXの推進等によるUXの向上=デジタルへの移行が急速に進む中、顧客サービスや社員の働き方をDXにより利便性を高め、効率化していくことは必須。
 顧客サービスでは、昨年発表した郵便局アプリの機能拡充、グループ各社の保有データを統合した住所変更手続きなどのワンストップ化、社内ネットワークのオープン化などを行う。
 25年度のセグメント別主要目標等については、郵便・物流事業は、郵便料金の改定はじめ、日本郵便の強みを活かせる小型荷物を中心とした荷量の増加により営業利益が900億円を見込む。郵便局窓口事業は、収益の多くを占める手数料収入の減少などにより、490億円の営業赤字となるが、収益力の向上や生産性の向上等に取り組み、26年度以降は早期に黒字基調への転換を目指す。銀行業は、当期純利益4000億円以上、生命保険業は同970億円となる見通し。
 日本郵便新経営理念
 日本郵便は5月15日に新たな経営理念を制定した。新たな経営理念は、「一人ひとりの人生に寄り添う。すべての人の心をあたためる。」とし、同社の存在意義やあるべき姿などを整理したストーリーを作成した。


>戻る

ページTOPへ