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2024年05月27日 第7250号

【主な記事】

大塚耕平参議院議員 郵便局ネット、時代のニーズに合わせ活用
社会に不可欠なインフラ
人口減少、高齢化、過疎化へ対応


 日本郵政に対する外資規制を盛り込む郵政民営化法改正が検討されている。一方、外務省などにはそれを阻止しようとする動きもあるようだ。日本銀行勤務を経て2001年に参議院議員に当選し、民主党政権で郵政改革担当副大臣等を務めた大塚耕平参議院議員は「郵便局ネットワークを維持することは、日本が抱える課題解決に資する重要な国策であり、諸外国に対して毅然とした姿勢を示すべき」と訴える。(坪内隆彦)


 ■人口減少、高齢化、過疎化が進行する中で、「地域の最後の砦」としての郵便局への期待が高まっています。
 郵便局ネットワークは社会にとって非常に貴重なインフラです。ただし、郵政事業が始まった明治初期と現在では社会や経済の環境などが大きく異なります。郵便局ネットワークを時代のニーズに合う形で活用することが重要です。
 人口減少、高齢化、過疎化への対応は喫緊の課題であり、今後半世紀近くその状況が続きます。郵便局ネットワークが諸課題に適切に対応できれば、日本郵政の果たす役割は重要性を増すでしょう。
 防災における郵便局の役割にも関心が高まっています。郵便局を防災拠点として活用するという合意が形成されれば、郵便局に食料を備蓄するなどの対応も一案です。
 また、災害時には被災地の役場の機能が低下します。郵便局が行政のサテライト拠点として発災後の行政手続などを代行すれば、被災者を支援することができます。
 ■大塚議員は来春予定されている名古屋市長選への立候補を表明しています。名古屋市における郵便局ネットワークの利活用についてどのような構想をお持ちですか。
 名古屋市ではマイナンバーカードを利用した行政サービスが遅れています。マイナンバーの制度やカードを利活用するとともに、郵便局による行政サービス支援も進めたいと考えていますので、総務省や関係者に相談したいと思います。
 年金記録の確認はインターネット経由でも可能ですが、高齢者を中心にICTに不慣れな方もいます。
 郵便局で年金記録の確認などができるようにすることを、厚生労働副大臣時代に実際に検討しました。そうしたことにもチャレンジしたいと思います。
 また、ゆうちょ銀行のネットワークを活用した地域経済活性化にも取り組みたいです。2021年の銀行法改正により、銀行は地域商社を設立できるようになりました。地域の中小企業のビジネスチャンス拡大のために、ゆうちょ銀行が全国ネットワークを活用して各地に地域商社を設立することも一案です。まずは名古屋で先鞭をつけ、全国に拡大できれば嬉しいですね。
 ■金利上昇局面でのゆうちょ銀行、かんぽ生命の課題についてどのようにお考えですか。
 ゆうちょ銀行は収益の大半を証券運用収益に依存しています。超低金利下では、日本国債中心の運用では収益性が低いため、収益性は高いもののリスクも高い外国証券等の運用を拡大してきました。
 もはや、郵便貯金が「安心安全」の代名詞とは言えません。
 金利上昇局面を迎え、他の金融機関のように貸出業務を拡大できればいいですが、ゆうちょ銀行の貸出業務には法律に基づく認可が必要です。そうした制約があるため、ゆうちょ銀行はΣビジネスを新たなエンジンと位置づけ、地域活性化につながる投融資事業に注力しようとしています。Σビジネスを通じて経験やスキルを積んだプロパー社員を増やすことは可能ですが、中心は外部から採用される人材です。
 この構造に大きな矛盾が内包されています。プロパー社員と比べると民間金融機関等出身の外部人材は、日本郵政の公的使命に対する認識は相対的に希薄だと思います。日本郵政のためには外部人材の力が必要な一方、外部人材の活躍は日本郵政の強みを脆弱化させるかもしれません。
 長期金利の上昇局面を迎え、生保各社が保険料の計算基準である予定利率引上げや新商品投入の動きを活発化させています。かんぽ生命は新商品を投入できなければ厳しい状況が続くでしょう。ゆうちょ銀行と同様に、経営の足枷になっているのが上乗せ規制です。また、かんぽ生命でも民間生保等出身の外部人材のビジネスマインドと日本郵政の公的使命の折り合いをつけることが課題です。
 ■民営化法の改正によって上乗せ規制を緩和する必要があるということですね。
 そう思います。融資業務についての規制を緩くし、預入限度額も撤廃していいと思います。(2面につづく)


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