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2024年07月15日 第7257・7258合併号

【主な記事】

日本郵政 加藤進康副社長
物流や不動産に資金と人材
経営の安定・成長、企業価値を向上


 日本郵政グループは厳しい経営環境の中、先日発表された2024年3月期決算では増収減益となった。ゆうちょ銀行の株式売却に伴う持分比率低下の影響が含まれてはいるものの、純利益は大きく下がっている。日本郵政の加藤進康(かとう のぶやす)代表執行役副社長は「『郵便局ネットワーク』『ラストワンマイルの配送網』という唯一無二の経営資源を有するポテンシャルを十分に発揮していくためにも、組織や会社間の壁をできるだけ低くしていかなくてはならない」と強調する。加藤副社長に決算についての評価や、中期経営計画の目的やポイント、郵便局ネットワークの活用などについて話を聞いた。


 ■5月15日に2024年3月期日本郵政グループ決算が発表になりました。グループ全体では増収減益ですが、特に純利益が結構下がっています。どのように見ていますか。
 経常収益などが前年度比で増収になっていますが、その主な要因は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の運用収益などが前年より少し拡大してプラスになったためです。加えて、かんぽ生命が再保険という形で民営化前の契約の一部を再保険として出再したことにより経常収益が増えました。これはかんぽ生命で適時開示しています。出再時に、再保険の引受会社に保険料を支払うために責任準備金というものを取り崩して、それは経常収益として会計上認識され、経常収益が増えましたが、取り崩した分は再保険料として払うので、純利益としてはニュートラルです。
 したがって、実質の経常収益の増は、前年比として大きくありません。それが、純利益が減っているところにも繋がっています。ゆうちょは増益になりましたが、2023年3月にゆうちょの株式を2次売却しましたので、日本郵政の持分比率が89%から61.5%まで約30%下がっていますので、郵政グループの取り分の利益がその分減ります。この利益の減少分は約980億円と換算され、売却の影響が最終的な純利益が減っている大きな理由の一つです。
 加えて、日本郵便の利益が前年比で548億円減っていて、かんぽも一部資産運用で利益が出ている部分はあります。価格変動準備金に積み増しをして、純利益には反映されないので、減益になっています。その結果、グループ全体では、前年比37.7%減少という、大きな減少になりました。法律で金融2社の株式の売却義務が課されているため、ゆうちょ銀行の株を売却した結果、保有比率が減り連結利益への取込みが減ることは、制度上やむを得ませんが、それに代わる他の利益がすぐに出るわけでもありません。その点を除けば、実質的には、日本郵便の減益がグループ全体に厳しく効いた決算であった、というのが今回の見方です。(2面につづく)


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