「通信文化新報」特集記事詳細
2024年07月15日 第7257・7258合併号
【主な記事】石井啓一公明党幹事長(郵政議員懇話会会長)
郵便局は公共的サービス提供を
三事業一体、法的に担保
日本郵政 金融2社の株は一定保有
自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(郵活連)は、1月に招集された通常国会で郵政民営化法改正案の提出を目指していたが、法案提出は秋の臨時国会に持ち越された。かつて自民党と民主党が激しく対立する中で、2012年の民営化法改正で重要な役割を果したのが公明党だ。同党幹事長とともに郵政議員懇話会会長を務める石井啓一衆議院議員に民営化法改正などについて聞いた。(坪内隆彦)
■郵便事業を取り巻く環境は厳しくなっていますが、少子高齢化、過疎化が進む中で郵便局への期待も高まっています。
平成の市町村合併によって、3200余りあった市町村は約1800人に減少し、庁舎が1つに集約されました。残りの庁舎は支所・出張所として機能してきましたが、人口減少に伴い急速に減少しています。一方、地方銀行の支店などの統廃合も急速に進んでいます。少子高齢化、過疎化が進んでいる地域ほど、そうした状況が顕著に見られるようになっています。つまり、住民に対して公共的なサービス、金融をはじめとする基礎的なサービスを提供することが難しい地域が急速に増えています。
一方、高齢者の方たちも自分で車を運転できるうちは本庁舎に行くことができますが、運転免許を返納した途端に「移動難民」になってしまうケースが増えています。こうした状況の中で、人口減少が進む地域の公的なサービス、金融をはじめとする基礎的なサービスを提供するネットワークとして、郵便局は極めて重要な存在になっているということです。この郵便局ネットワークを、それぞれの地域の状況に合わせて利活用することが非常に重要になっていると思っています。
特に災害時などには、それぞれの地域に公的な機関の出先が存在することは非常に重要なことです。市役所の出張所などが閉鎖されていく中で、それに代わる公的な拠点としての郵便局の存在は、防災面からも重要な役割を果たすことができると思います。また、災害時には地域の状況を熟知している郵便局長の方々の役割は非常に大きいと思います。
■公明党の議員ネットワークは地域の課題解決に取り組む力があると評価されています。
我々公明党は「ネットワーク政党」であり、国会議員、地方議員を合わせると約3000人の議員がいます。「チーム3000」とも言われています。
市町村議員同士の横の連携と、市町村議会議員、県議会議員、国会議員という縦の連携という「縦横のネットワーク」を駆使し、地域のさまざまな課題に取り組んでいる政党です。
そうした意味では、我々の議員ネットワークと郵便局ネットワークには非常に親和性があると考えています。
■民営・分社化によって三事業の一体感が弱まったと指摘されています。
日本郵政の中期経営計画「JPビジョン2025」には、「できる限り早期に保有割合50%以下を目指す」と書かれています。昨年3月には日本郵政がゆうちょ銀行の株式を売却した結果、持ち株比率は89%から約60%に低下しました。ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の持ち株比率が低下するにつれ、グループの絆が弱まっていると感じています。会社間の資本関係が弱まれば、どうしても一体性は弱まるものです。
■民営化法を改正して、日本郵政が金融2社の株式を一定程度保有し続けるようにすべきだということですね。
そう思います。三事業を一体的に運営する必要性は高まっており、自民党とも連携を取りながら、それを法的に担保する改正を実現させたいと考えています。
■民主党政権が提出した郵政改革法案は、2010年から実質的に審議されないまま2年近く「塩漬け状態」になっていました。この状況を打開すべく2012年4月に民営化法改正案が成立しました。このとき公明党はどのような役割を果したのでしょうか。
2009年に政権に就いた民主党と野党に転落した自民党は、次の選挙でどちらが政権を取るかという熾烈な争いをしていました。自民党は、次こそは政権を奪還するという思いで、民主党政権に厳しい姿勢で臨んでいました。そのため、両党はお互いの主張を繰り返すだけで、合意を目指して話し合うような状況ではありませんでした。しかも、2010年7月の参院選で民主党が大敗し、「ねじれ」状態になり、民主党政権が提出した郵政改革法案は動かなくなっていました。
その間、郵便物の取扱量や郵貯の残高などは減っていき、我々は国民共有の財産が日々損なわれていると感じていました。このような状況を放置しておいては、郵政民営化のマイナスの側面がどんどん広がってしまうので、状況を少しでもいい方向に変えなければならないと我々は考えたのです。
そこで、公明党が自民党と民主党との間に立ち、橋渡しをしようとしたのです。公明党は、民営化の道筋は変えず、郵便貯金、簡易保険の金融2事業にも全国一律のユニバーサルサービスを課すことなど、新たな提案を示し、自民党、民主党双方の主張に耳を傾けながら3党協議をリードしました。そして、2012年3月にようやく3党共同での法案提出に漕ぎつけ、成立させることができました。(2面につづく)
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