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2024年07月29日 第7259号

【主な記事】

西田昌司参議院議員 経済の停滞、要因は郵政民営化
抜本的な法改正は当然
金融の上乗せ規制は外すべき


 自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(郵活連)は、秋の臨時国会での郵政民営化法改正を目指し、党内手続きを進めている。ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険に対する上乗せ規制の緩和については、金融業界との調整が焦点となっている。党の金融調査会副会長を務めるとともに、財政政策検討本部の本部長として積極財政論を唱える西田昌司参議院議員に聞いた。(坪内隆彦)


 ■郵活連を中心に郵政民営化法の改正が議論されていますが、党内の調整は進んでいるのでしょうか。
 郵活連がまとめた素案には、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険に対する上乗せ規制の緩和が盛り込まれています。規制によって両社の経営の自由度が著しく制限されているからです。ゆうちょ銀行の預金限度額、かんぽ生命の加入限度額が制限され、両社とも子会社保有、新規事業について規制を受けています。私は自民党の金融調査会副会長を務めていますが、「イコールフッティング」(同等の競争条件)が重要だと言うのであれば、上乗せ規制を外すべきだと考えています。
 ところが、金融業界には上乗せ規制の緩和を警戒する声もあります。そのため、金融調査会の片山さつき会長は「金融業界に対してきちんと説明をし、業界の意見を聞く場を設けた上で進める必要がある」と述べています。
 ■金融業界の意見を聞いた結果、素案の修正を求めることもありうるのでしょうか。
 私は金融業界にきちんと説明をし、素案の方針に納得してもらうということだと理解しています。
 ■郵活連の素案には、日本郵政と日本郵便の合併、金融2社の持ち株比率の下限規制創設なども盛り込まれています。
 もちろん私は素案のすべての項目に賛成です。現在のままでは郵便局ネットワークを維持することはできません。民営化法を抜本改正するのは当然だと考えています。
 ■西田議員は、郵政民営化が新自由主義的な経済政策の一環として進められたことを強調しています。
 民営化前には、郵便局を通じて集められた郵貯と簡保のお金が中央政府に集中され、財政投融資の原資として運用されていました。財政投融資は公共投資と社会的インフラの整備などに有効に使われてきました。これが日本経済を支えていたのです。
 つまり、国民のお金がタンスに眠ることなく、財政投融資の原資となる郵便貯金となって、公共のためにうまく活用されていたのです。私が郵政民営化に強く反対した理由の一つは、こうした仕組みが破壊されると考えたからです。
 私は、日本経済の停滞は、公共的に使われるお金が減少しているからだと考えています。本来、インフラ整備は建設国債の発行でできるはずです。
 しかし、プライマリーバランスの黒字化が閣議決定されて以降、赤字国債だけではなく、建設国債も抑制されてしまい、結果的に長期の投資計画はできなくなりました。その結果、東京一極集中、地方の衰退に拍車がかかったのです。さらに、少子化、デフレ化を加速させてきました。つまり、こうした事態を招いた根本原因の1つが郵政民営化だと認識しています。
 私は小泉政権が進めた郵政民営化は、新自由主義的な政策の流れの中でとらえなければならないと考えています。小泉政権は「聖域なき構造改革」をスローガンに次々と制度改革を進めました。
 この改革は新自由主義に基づく「小さな政府」を目指すものであり、その象徴が郵政民営化だったのです。
 小泉政権は、公共サービスを民営化により削減し、民間にできるものは民間に任せるべきだと主張し、あらゆることを「官から民へ」移管しようとしました。(2面につづく)


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