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2024年08月26日 第7263号

【主な記事】

防災に習熟の社員を育成
日本郵便 気象庁と連携協定

森気象庁長官㊧と千田社長が協定書を交換


 「気象庁と日本郵便株式会社の連携に関する協定」が8月1日に締結された。日本郵便の千田哲也社長と気象庁の森隆志長官が東京・港区の気象庁で協定書を取り交わした。防災気象情報の適切な利用による災害対応に習熟した人材の育成を連携して進めることなどを通じ、地域住民の生命や財産の保護を図ることに継続して取り組む。
 連携協定の内容は①講習会や研修の開催等による災害対応に習熟した人材の育成②防災気象情報の適切な利用のための刊行物の周知③災害対応における資料などの充実④その他、協定の目的に資すること。
 具体的には、日本郵便で実施する災害対応訓練などで、気象庁が企画助言を行うとともに講師として防災気象情報を活用できる人材の育成を支援していくほか、気象庁作成のチラシ・ポスターなどを郵便局に設置し、地域住民の防災気象情報の適切な利用を周知する。
 また、気象庁と日本郵便が作成する防災に関する資料について、相互に助言することなどを通して、防災に関する知識の普及に貢献する。
 日本郵便は、全国の郵便局ネットワークを持ち、日ごろから地域の防災活動など、近年気候変動などの影響による災害に対して社会を守る活動を行っており、大規模災害発生時には、災害復旧支援を迅速に行い、地方公共団体や企業と連携しながら、災害に強く安心して暮らせる地域づくりを進めている。
 気象庁は、自然を監視予測し、国民の生命や財産が災害から守られるよう、適宜的確な大雨警報などの防災気象情報を発表・伝達すると同時に、「自ら考え判断して自ら行動できる」「自分の身は自分で守る」風土・文化の醸成を目指し、安全知識の普及啓発を関係機関と連携して進めている。
 令和5年の日本郵便からの打診を契機に、気象庁が発表する防災気象情報の適切な利用による地域住民の安全確保等に向けて、日本郵便の社員向けの風水害・地震津波災害に関するワークショップや火山噴火に関する勉強会を開催してきた。
 これらの取り組みを通じて、全国に地域密着の郵便局ネットワークを持つ日本郵便との連携が、地域防災支援の効果的・効率的な推進につながることを実感し、今回の協定締結に至った。
 森長官は「日本郵便は全国各地に郵便局を設置し、地域に根ざしたネットワークを活用した防災活動に取り組んでいる。気象庁と郵便局が連携することが地域の防災支援に非常に有益であることから、協定締結となった」とし、「気象庁は防災意識の高い社会の構築を目指しており、その一環として公共機関とのコミュニケーションを推進している。協定は災害に適切な対応ができる人材を育成し、地域住民の生命・財産を保護することを目的としている」と述べた。
 郵便局で防災に関する研修や講習会を実施し、防災対応に習熟した社員の育成に努める方針を明らかにし、「郵便局員の皆さんとの現場レベルでの連携も含めて、一層効果的な取り組みが行われることを期待したい」と語った。
 千田社長は「郵便局は郵便・貯金・保険といった地域の方々には欠かせないサービスを提供しており、全国津々浦々に郵便局が存在する。最近は地震や風水害など様々な自然災害が多発しているが、災害が起きた場所には必ず郵便局がある。そのため郵便局の社員が防災能力を高め、地域の方々に少しでも貢献ができるよう気象庁と協定締結をした」と述べた。
 通信文化新報は「協定締結により、郵便局で防災に関する様々な研修会が行われることになるが、社員にはどの程度の防災能力を期待しているか」と質問した。
 千田社長は「郵便局はいろいろな面で地域貢献をしたいと思っている。高齢者の見守りサービスや終活サービス、地方公共団体との連携など3事業以外のサービスも提供している。防災に関するサービスも地域への貢献の一環として考えている。特に防災は直接生命に関わる事案なので、中途半端ではなく、きちんとした知識と専門性を社員に身につけてもらい、それを実際の現場に生かせる社員づくりを目指している」と答えた。
 〈千田社長の話〉地域に根差したサービスを展開する中で、本業を離れた形でのサービスの提供が非常に大事だと考え、地域貢献を進めてきている。地域に目を向けると、地震や洪水などの災害が日常的に起こっている。郵便局は全国津々浦々にあるので、どこで災害が起こっても、そこに郵便局があるのが実態だ。被災した地域の皆さんのために、少しでも郵便局が地域貢献できればという思いで今回の締結に至った。
 しかしながら、日ごろからどのような準備をしていけば良いのかということについての知識が少ない。ただ、多くの社員がいるうえ、2万4千局の郵便局ネットワークを有しているので、能力が付いて地域の皆さまに貢献ができる状況になれば、われわれの所定の目的も果たすことができる。気象庁から、すでにワークショップという形でさまざまな支援をいただいており、これからの防災・減災に対する知識や対応能力の向上についてのパートナーとして認識している。
 郵便局としては、そうした能力や知識を身に着け、日常的に地域の皆さまと一緒に防災対策に取り組み、少しでも不安を軽減して郵便局としての災害分野での地域貢献を果たしてまいりたい。協定の目的は、災害時の対応協力はもちろん、平常時での防災・減災に関して郵便局がいかに地域貢献できるか、その能力をどのように身につけるかというところにある。それを通じて、郵便局の地域に対する魅力や価値の向上を実現してまいりたい。これから具体的にどんなことを行っていくのかについて、お互いにしっかりとコミュニケーションを取りながら、協定の効果・目的が達成できるようにしていきたい。


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