「通信文化新報」特集記事詳細
2024年08月26日 第7263号
【主な記事】ポスト投函の新サービス
日本郵政増田社長 AI活用し配達コスト削減
柔軟な料金設定が望ましい
物価変動に対応した制度を
日本郵政の増田社長は8月7日の定例会見で、郵便事業の収益改善について、「全国で18万本弱ある郵便ポストに投函するという、非常にきめ細かくお客さまに使っていただける利点をできるだけ活かしたような新サービスを考えたい」と述べるとともに、コスト削減に関して、「自動区分機の性能をアップすることに加え、最適配達ルートや最短時間ルートを計測するようAI活用も含めて、ルート設定の強化を図ることに取り組んでいる」と語った。
「7月25日に発表した2023年度の業務区分別・郵便事業収支で明らかになった郵便ユニバの営業損益が▲951億円で2年連続の赤字となったことを踏まえ、郵便事業の収支の現状についての認識と値上げを含めた今後の収益状況の改善策についての見解を」との記者の質問に答えた。
増田社長は「郵便事業は当然のことながら、先行きはなかなか厳しいものがあると思う。それに対して一つは値上げということだが、それ以外にもやるべきことにきちんと取り組んでいく必要があると思っている」と述べた。
「このたび第3弾を迎えるズッキュン♡郵便局などは、広く言うと手紙文化振興の性格を持ち、新しい層を開拓して手紙文化の振興を図っていくという意味合いがあるだろう。ダイレクトメールの良さをもっと発信して、新サービスと組み合わせて、できるだけ郵便事業を使っていただくようにしたい」と語ったうえで、「新サービスは全国で18万本弱ある郵便ポストに投函する、非常にきめ細かくお客さまに使っていただける利点をできるだけ活かしたような新商品を考えたいと思っており、今検討しているところだ」との見通しを述べた。
また、年賀状についても、「毎年販売枚数が減ってきているので、昔のように『当選したら、どういう商品がもらえるか』などのワクワク感を工夫できないかと思っている。いわゆる新しいサービス形態で考えていることを実現したい」との考えを示した。
コスト削減については「郵便事業は、言うまでもなく全国どこでもお届けするというユニバーサルサービス。自動区分機をいろいろと導入しているが、その性能をアップすることに加え、配達ルートについても、最短の時間や距離を考え、その日の運ぶ量や内容に応じて、どういう形で最適ルートや最短時間ルートを計測するのか。AIに力を入れることも含めて、ルート設定の強化を図ることに取り組んでいる。そのような局内作業を機械化するほか、局の外ではより迅速に省力化でお届けできるよう、全体としてさらに見直しするところは見直しを行い、郵便事業の収支の改善に努めてまいりたい」と述べた。
「総務省で郵便料金制度の見直しについての議論があるが、日本郵政グループ全体として、経営の自由度を高めていくうえで要望はあるか」との問いについて、増田社長は「郵便料金自体はもちろん社会に大きな影響を与えるため、現在、消費者庁や消費者委員会でのかなり重厚な手続き、物価問題に関する関係閣僚会議などの議論を経て決められる。そういう観点も大事だと思う一方で、諸外国を見ると、物価の変動に合わせてかなり頻繁に郵便料金を少しずつ手直ししているような形がある」とした。
そして「消費税を除くと、ほぼ30年間ずっと同じような料金だったが、この間に、油代が相当上がり、日本経済全体では人件費をきちんと支払い、それを消費に回して、経済をうまく回していこうという環境の中で、当然のことだが人件費をかなり高く設定しており、より柔軟な料金設定ができる方が望ましいのではないか」との考えを述べた。
「具体的にどの点をどうするかについては、グループ社内で検討したいと思う。議論の場の中で各有識者の意見も聞きながら、会社としてもどのような制度が望ましいかということを考えていきたいと思うが、全体的には、より物価や景気の変動に対応しやすいような料金設定が望ましいと思う」との考えを示したうえで、「ただし、頻繁に料金を変えられれば良いということではなくて、一方でかなり公共料金的な性格を帯びていることは重々承知しているので、それを踏まえたうえで、必要なところはきちんと残して、新しい制度に繋がっていけばと思っている」と語った。
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