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2024年09月09日 第7265号

【主な記事】

日本郵政増田社長
「JPビジョン2025+」成長戦略を示す
「共創プラットフォーム」のパワーアップへ
物流、不動産に資源投入
郵便局の機能を高める


 日本郵政グループは5月に中期経営計画の見直し・改訂版「JPビジョン2025+(プラス)」を公表した。今回の見直しを機に、日本郵政の増田寬也社長にインタビューし、成長戦略や共創プラットフォーム、サステナビリティ、公的サービス・公的財政支援などグループを取り巻く諸課題・命題について話を聞いた。
 成長ステージへの「転換」を実現する3つのドライバーのひとつに郵便局が挙げられており、その機能強化を図りながら、グループ全体で郵便局ネットワークを十二分に活用していくことになる。増田社長は「これから地域でも国としても、共創プラットフォームとしての郵便局を使っていただきやすいように、パワーアップしていくということに力を入れて見直しを行った」と語った。【聞き手=永冨雅文】


■今回の中期経営計画の見直しについて、その背景とポイントを聞かせてください。
 中期経営計画「JPビジョン2025」は2021年度から2025年度までの5年の期間を対象に作成しましたが、デジタル化の進展など社会情勢が変化し、その加速も著しいため、3年経過したら、一度見直しを行うことにしていました。「JPビジョン2025」を策定した時は、かんぽ不適正募集問題など不祥事発生の直後だったこともあり、不祥事の根絶を前面に出して、信頼回復に向けた方向性をきちんと示す、そういうための中期経営計画でした。
 中期経営計画の本来の目的は、やはりグループ全体が成長に向けて進んでいく方向を示すことにあります。3年が経過して、引き続き不祥事の対応に留意しながらも、態勢がきちんと整ったことから、今回の見直しでは成長していく姿を示したいという思いが強くありました。
 こうした背景から、今回発表した「JPビジョン2025+」では、成長ステージへの転換を強調しています。社員の皆さん、そして投資家を含めたすべてのステークホルダーにも、成長に向かう姿をしっかりと伝えたいという思いを持って見直しました。
 社会全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進展する一方で、人口減少が進む中、企業グループとして、さらなる成長に向かって歩みを進めることができる、そういう内容を柱に盛り込みました。
■具体的な見直しとして3つの柱が掲げられています。
 3つのポイントは、まず「資源配分」を変えていくことです。さらに大事なのは「郵便局」の機能向上、それから「人材・システム」です。
 「資源配分」については、物流と不動産の2つの分野への積極的な資源の投入が最優先となります。
 グループのコア事業である郵便・物流分野では、郵便物が落ち込まざるを得ない状況の中で、物流部門でしっかりと事業を支えていくような形にしなければなりません。
 また、就任当初から非常に気になっていたのは、膨大な不動産アセットを持っている中で、例えば駅前の好立地にも関わらず、容積率を相当余らせている郵便局が多数あるという点です。今では自治体などの意向も受けて、駅前などを中心に街の拠点づくりが提唱されており、こうした良好な不動産資産をできるだけ活かして、収益に繋げるような流れを加速させることが必要です。
 「郵便局」の機能向上については、他の企業グループでは絶対に持ちえない、全国2万4千の郵便局ネットワークがあることが最も大事な点です。地域の人口減少が急速に進んでいる中、自治体からは公的分野の業務も郵便局にお願いできないかという要請があります。例えば今後、膨大なマイナンバーカードの電子証明書の更新業務への対応が求められますが、一度に集中すると自治体窓口だけでは到底さばききれないため、郵便局に委託してはどうかという話も出てきております。このような社会的な要請にも応えていかなければなりません。
 また、投資信託の販売では、郵便局にタブレット端末を設置し、金融コンタクトセンターに常駐する専門知識を持った社員とリモートで接続して、どこの郵便局でも高度な説明を受けることが可能となりました。当初は東京の世田谷郵便局に拠点を置いて、全国約4千局と繋いで投信販売をしておりましたが、ニーズの高まりを受け、横浜にも拠点を設けて全国約6千局強で取扱う態勢を整えました。
 郵便局の仕事をいわゆる公的分野に広げていきつつも、一方でタブレット端末などを活用して、窓口社員の皆さんの業務環境を整えるなど、郵便局の機能を高めていこうと考えています。
 かねてから懸案になっている昼時間帯における窓口休止についても、お客さまの利便性への影響なども踏まえながら、柔軟に調整していければと考えています。お客さまの利便性の観点に立つと、さらに言えば、お客さまが利用しやすいように大きなショッピングセンターなどに移転開局することも考えられます。土日も含めてサービスをご利用頂けるよう、郵便局をもっと地域に馴染んだ拠点にしてまいりたいと思います。
 「人材・システム」では、研修機会の提供による人材育成の他、システム高度化によるセキュリティ対策も強化したいと思います。JPグループは金融情報も含む膨大な個人情報を有しています。社会全体でもサイバー攻撃によるリスクも顕在化しているため、セキュリティを堅牢・強固なものにしつつ、グループ全体で情報をうまく活用できるようにしていくことです。
 今申し上げたようなことは、3つの柱における代表例として捉えていただきたいと思います。他にも様々な例はありますが、一言でいうと、「共創プラットフォーム」としての郵便局ネットワークを活用していただきやすいように、その魅力を高めていくという点を主眼に見直しを行いました。
■共創プラットフォームですが、以前から力を入れて推進されていますが、具体的な成果について聞かせてください。
 咋年は長年ライバル関係にあったヤマト運輸との間で、小型荷物の配送を主とした協業を開始しました。この協業は、日本郵便が二輪車、軽四輪主軸とした強力な集配ネットワーク・ラストワンマイルというプラットフォームを持っていたことによって実現したものだと思います。
 お互いにライバル社といえども、無駄な時間や空間を浪費して荷物を運ぶことを避け、全体を考えながら協力し合えるところは協力していこうという目的で協業に至りました。「共創プラットフォーム」として存在する郵便局ネットワークが、他の企業グループに比べて比肩なき強い魅力に繋がっていることは間違いありません。(2面につづく)


 


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