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2024年09月16日 第7266・7267合併号

【主な記事】

松川るい参議院議員 日本郵政グループ女性活躍を期待
経済成長の牽引力
日本の印象を変え外交にも効果


 日本郵政グループはJPビジョン2025+の取り組みの3本の柱の一つ「人材への投資によるEX(社員が会社で働くことを通じて得られる体験価値)の向上」として、「女性活躍等への対応推進」を掲げている。また、2030年度までにグループ主要4社の本社における女性管理者の比率を30%に引き上げるという目標を掲げている。外務省時代に初代女性参画推進室長として国際女性会議「WAW!」を立ち上げたほか、「男性の育児休業義務化を目指す議員連盟」を設立し、育児・介護休業法改正を実現させた松川るい参議院議員(大阪選挙区)に日本郵政グループの女性活躍について聞いた。(坪内隆彦)
■松川議員は外交・安全保障だけではなく、女性活躍についても積極的に発言されています。女性活躍に取り組むようになったきっかけは何だったのでしょうか。
 第二次安倍政権時代の2014年4月に、外務省に新設された女性参画推進室の初代室長に就任したことがきっかけです。東日本大震災直後の2011年4月に在韓大使館一等書記官としてソウルに赴任し、3年近くソウルにいましたが、2013年に次女を出産したため、半年ぐらい育児休業をとっていました。外務省の人事課に2014年4月から復帰したいと伝えると、人事課長から「女性参画推進室というのを新設するから、そこの室長をよろしく」と言われました。当初は、省内のセクハラ担当か何かの部署だろうかと思いました。ソウル駐在で離れていたため、日本の大きな変化に疎かったのです。
 2012年12月に第二次安倍政権が誕生してから、女性活躍の取り組みが主要なアジェンダとして急速に進んでいました。特に安倍総理は2013年9月の国連総会で行った一般討論演説で「女性が輝く世界をつくる」と訴え、世界の女性から拍手喝采を浴びました。
 日本の総理、しかも「保守派」と評価されていた総理が、約30分のスピーチの95%を、世界の女性や少女達の活躍や女性のエンパワーメントについて話すというのは前代未聞のことでした。安倍総理はスタンディングオベーションで拍手を受けるとともに、演台後ろ手から降りた出口には、握手を求める女性たちであふれたそうです。それぐらいインパクトのあるスピーチでした。
■女性活躍を、外交や経済成長と結びつける発想はどの辺りから出てきたのでしょうか。
 第二次安倍政権の目玉政策の一つとなった「女性活躍」には、経済と外交の両方の要素がありました。労働力不足という観点でいうと、当時は子育て期の女性の就業率が落ち込む「M字カーブ」を描いていて、人口の半分を占める女性のポテンシャルが生かされていませんでした。
 子供を産んだ途端に労働市場からいなくなり、子育てが一段落して、子どもの手が離れてから労働市場に戻ってくるという状況です。しかし、このブランクがキャリアを築くうえでマイナスとなり、管理職になる女性がなかなか増えないという時代でした。保育園や育休制度の充実をはじめ女性が活躍しやすい環境を整えることによって、女性就労者数が拡大し、また重要なポジションに就く女性が増えることは、経済成長にもつながるという発想です。
 多様な人材がいた方が、イノベーションが生まれやすいですし、労働力を確保するために人口の半分を占める女性を無視するわけにいきません。こうして、女性は経済成長を牽引するエンジンであるとして、「ウィメノミクス」という表現が使われるようになりました。人生に出産、子育てなどのライフステージがある女性にとって活躍しやすい社会は、高齢者、外国人、介護や病気を抱えながら働く人たち、つまり多様な人にとって働きやすい社会であり、社会の全ての人の幸福につながります。女性が持てる力を発揮することは社会のためにも経済のためにも良いことだと改めて感じました。
 PISA(OECD生徒の学習到達度調査)などを見ても、日本の女性は数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力ともに世界のトップレベルなのです。女子の大学進学率は53.4%(2022年)まで上がっています。ところが、社会では女性の力が生かされていません。
 また、外交面でも、日本という国が「女性の味方である」ということを打ち出すことには大いに意味があります。世界には、例えばパキスタンのマララ・ユスフザイさんが女子教育の必要性を訴えてきたように、女性だというだけで学校に行かせてもらえなかったり、銀行口座を作らせてもらえなかったりするような状況にある国も少なくありません。日本が、女性活躍、女性のエンパワーメント、女子教育向上などを掲げ、経済協力やUNWomenなどの国際機関への協力を進め、国連などの場で女性が活躍できる社会を訴えることは、実際に世界の女性たちに役立つだけでなく、一部に残っていた「男尊女卑の日本」というイメージを払拭し、日本のイメージを向上させることにつながります。世界人口の半分を日本の味方にできたら、これ以上良いことはないでしょう。
 女性参画推進室の初代室長に就いて、改めて女性活躍の重要性を認識したわけですが、「女性が男性と同様に活躍できるのは当然のことだ」、「男女の家事・育児分担は公平であるべきだ」という信念は、私の育った家庭環境からもきているような気がします。私は3人姉妹の長女です。圧倒的に家族に女性が多い家族環境でしたし、私が小学4年生の頃、父が脱サラし、母が主たる稼ぎ手となった時期が10年近く続いたこともあり、両親とも仕事も家事もするという姿を見て私たち姉妹は育ちました。また、私たち姉妹は3人とも女子中・高に6年間通いました。そのため、「男性を立てる」というような習慣を持たないまま育ちました。女性がリーダーシップを取るのは当たり前のことでした。(2面につづく)


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