「通信文化新報」特集記事詳細
2024年10月21日 第7271・7272合併号
【主な記事】「インパクト志向企業価値向上アライアンス」発足
持続可能な社会の実現を 企業価値の向上も
かんぽ生命 谷垣社長が基調講演
企業の社会的・環境的役割の向上が求められている近年、「金融を通じて環境・社会的課題を解決する」との考えに基づき、10月4日、日本生命日比谷ビルで「インパクト志向金融宣言」主催のセミナーが開催され、新たな分科会「インパクト志向企業価値向上アライアンス(ICEA)」が発足した。
最初に発足の概要について安間匡明インパクト志向金融宣言事務局長が説明。「ICEAの目的は、上場企業に対する投資を推進し、インパクト創出を通じて企業価値向上に取り組むこと。これまでの株式市場はインパクト投資に無関心だったが、少しでも多くの上場企業にインパクトが企業価値の重要な要素であることに気付いてもらうことにある。投資家と企業がインパクト志向という共通の認識を持って取り組むことで、株式市場で存在感のある取り組みにしたい」と述べた。
インパクト投資とは財務的リターンと社会的リターンの両立を目指す投資行動で、ESG投資などとともに市場規模が年々拡大傾向にある。
ICEA発足にあたり、かんぽ生命の谷垣邦夫社長が基調講演を行い、ICEAへの参画とインパクトへの思いについて次のように述べた。
インパクト志向金融宣言は2021年11月に21社で発足したが、今年9月現在で署名機関が80社になった。このたび日本を代表する生命保険会社を中心として、新たにICEAが発足した。かんぽ生命は、インパクト創出が企業収益の安定や企業価値の向上につながるという趣旨に賛同し、発足当初から参画することにした。
上場株式におけるインパクト投資は、まだ海外ではスタンダードとして確立されておらず、いわばチャレンジングな取り組みでもある。かんぽ生命では、上場株のインパクト市場を成長、発展させたい思いから、世界に先駆けて2022年5月にコモンズ投信と共同して「コモンズインパクトファンド共創」を立ち上げた。このファンドのコンセプトは、社会的インパクトの創出に取り組む企業に長期的な視点で投資を行い、社会的・経済的リターンの両立を目指しながら、企業の価値創造に貢献していくことにある。
ただ、現在のところインパクトの投資先はスタートアップ企業と未上場企業が中心であり、これまで以上にインパクト投資の拡大を図るには、多岐にわたる事業を展開する上場企業の株式評価の場で認知度と重要性を高めていく必要性がある。
近年、インパクト創出を起点に企業価値向上を目指す上場企業が増えているが、まだ限定的な状況にある。このコモンズインパクトファンドが企業価値向上に取り組む上場企業を後押しする代表的なファンドになることで、インパクト志向の分析を行い、インパクト拡大につなげたい。
またかんぽ生命は日本最大のネットワークサービスを提供する日本郵政グループ傘下にある生命保険会社。サステナブル投資の領域では、幅広い資産を長期的に運用するユニバーサルオーナーとして持続可能な社会の発展に向け、Well―beingの向上、地域と社会の発展、環境保護への貢献などを重視した、かんぽ生命らしい暖かさが感じられる投資に取り組んでいる。
2022年には独自のインパクト投資の認証フレームである「インパクトKプロジェクト」を立ち上げた。この「K」には、かんぽの「K」のほか、絆や共創の「K」も含まれている。金融機関に対して社会課題解決の要請が高まっている中、投融資を通じて中長期的な経済的リターンの向上とともに社会課題を解決するシステムを実現したい。新たなエコシステムの構築やインパクト投資の発展に計画的に取り組んでいく。
最後に私たちは次の世代に対し、新たな価値を創造する土壌を育んでいかなければならない。金融機関が相互の利益のみならず、社会課題の解決に向けてインパクトを創出し、企業価値を向上していくために投資先の企業と連携していくことが今後の日本や世界の未来に大変意義のあることと確信している。今回の『インパクト志向企業価値向上アライアンス』設立により、持続可能な社会の実現に挑み、貢献していくことを楽しみにしている。
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