「通信文化新報」特集記事詳細
2024年11月04日 第7273号
【主な記事】東京地方郵便局長会 前野耕一会長 三事業の一体性維持を
急がれる法律の改正
地域があってこその郵便局
郵政事業の現状と将来展望、民営化法再改正の見通しなどについて、東京地方郵便局長会の前野耕一会長に聞いた。前野会長は、地域の期待に応えられる郵便局づくりには現場が動きやすい体制が必要であり、そのためには郵政民営化法の再改正が必要だと訴える。また、「風通しの良い組織づくり」には、地域の状況を自分の目で見て、話を聞くことが重要だと強調する。
■東京は全国屈指の都市部ですが、過疎地域もあれば、島しょ地域もありますので、組織の運営にいろいろと苦労されていると思います。また、局長会は「風通しの良い組織づくり」を目指していますが、東京地方会としてはどのように取り組んでいますか。
「風通しの良い組織づくり」のために、全特も各地区会にお邪魔して話を聞くように努めていますが、東京地方会も前年度から三役が各地区会を回り、中堅・若手会員や部会長と直接会って話を聞くことに努めています。
10月2日には、東京島しょ地区会の大島を訪問しました。大島にはエリマネ局が6局ありますが、土日祝日も1局は営業をしています。そのため、大変ご苦労されており、6局が一体となって土日祝日に営業できるようシフトを組んでいるのが現状です。
しかも、集配業務もあります。大島は航空・船便の欠航率が低く、荷物が予定通りに入ってきますが、島によっては欠航率が高く、荷物が急に増えたりするケースもあります。そのため、夜遅くまで対応しなければならないこともあるそうです。
各地区会をこまめに回り、交流し、話を聞くことが大事です。現場の状況を実際に見ることで、初めてわかることも少なくありません。
例えば、東京の都市部などでは電動バイクやEV車両の導入が進んでいますが、島しょ部や山間部などでは、都市部のようにはいきません。馬力が必要な山道が多いことや、充電施設が十分整備されていないためです。
東京23区にいると、そこが標準だと考えがちですが、地方の方から「東京23区が特別だ」とよく言われます。私も「確かにそうだ」と思うようになりました。例えば、同じ多摩地域でも都市部と山間部があり、地域によって状況は様々です。会社もそれぞれの地域性を考慮していただきたいと思います。
風通しの良い組織を作るためには、地域の状況を自分の目で見、話を聞き、それぞれの状況に対処していくことが大切です。
■東京会も部会の活動を活発にやられています。
先日も部会長セミナーに衆議院議員の国定勇人先生をお招きし、講演をしていただきました。東京では、毎年部会長セミナーを行っています。組織の要である部会まで情報伝達がきちんとできていれば、風通しも良くなってくると思います。そのためにも双方向のコミュニケーションが大事だと考えています。
■民営化から17年、改正民営化法施行から12年が経ちました。現場の局長さんの中にはなかなか将来展望が見えないという声も聞こえてくるように感じます。
展望が見えないのは、先が見えないというよりも、グループのビジョンが定まらないからではないかと思います。元々、特定局長は地域を大事にしてきました。「地域があってこその郵便局」だと考えています。ですから、「地域のための郵便局」を会社がどう支えていくのか、何が必要なのかという根本を考えていかない限り、展望は見えてこないのではないでしょうか。
地域から「なければ困る」と思われるような郵便局を作っていくためには、現場がやりやすい体制にしなければなりません。そのために郵政民営化法の改正が必要だと思います。特に、全特が要望している3社体制に変え、安定的な三事業の一体経営を維持していくことが重要だと考えています。
地域のお客さまがゆうちょ銀行にお金を預けたり、かんぽ生命の保険に入ってくださるのは、郵便局長が地域で様々な活動をし、お客さまの信頼を得てきた結果だと思います。
ところが、分社化により三事業一体でのサービスが難しくなりました。しかし、我々には「地域のために何ができるかを考える」というアイデンティティが残っています。
■先の通常国会では郵政民営化法改正案の提出までいきませんでした。
自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(郵活連)の先生を中心に頑張っていただきましたが、自民党内の調整に時間を要し持ち越しになってしまいました。
次の国会では是非とも成立させていただきたいと思っています。今回の自民党総裁選では、林芳正先生、加藤勝信先生、小林鷹之先生が郵政民営化法改正や郵政事業改革について公約で主張されました。高市早苗先生もx(旧Twitter)でつぶやいていただきました。もちろん、自民党内部での調整が必要ですし、もう少し時間はかかるかもしれませんが、必ず法改正ができると期待しています。(2面につづく)
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