「通信文化新報」特集記事詳細
2024年11月04日 第7273号
【主な記事】グループ横断のプロジェクト設置
利用可能な環境整備へ
日本郵便千田社長 非公開金融情報で防止策
9月6日に法令違反として認識したクロスセル同意を得ない非公開金融情報の不適切な取り扱いを巡って、日本郵便の千田哲也社長は10月9日、東京・大手町のKITTEで会見を行い、適切な取り扱いの確保に向けた取り組みなどについて、日本郵政の増田寛也社長をトップとしたグループ横断的なプロジェクトを設置することを表明し、抜本的な防止策を含めた7項目の再発防止策を公表した。
グループの全ての顧客接点でお客さまからの同意を得る取り組みを促進するとともに、郵便局でその情報を参照・検索等に利用できるようなシステム環境を整備していく。調査結果を踏まえ、今後、本社の役員等の責任を明確化する。同日発表の報道資料は、調査結果や再発防止策等についてグループ4社連名で公表された。
貯金営業担当顧客システムの検索履歴などを一定の条件のもと確認した結果、日本郵便がお客さまの貯金の非公開金融情報を事前に同意を得ずに、保険募集のためにリスト化等したと推定される、お客さまの人数は約155万人と判明した。
この点について、千田社長は、「本件事案が全国規模で行われていたことを確認するのは十分であり、この問題の真因は経営側の問題であることが確認できた」と強調し、「今後は、お客さまへ不利益を生じている事象の有無の確認やお客さまからの声、社内からの声に基づく個別の調査に注力していく。不適切な来局誘致が行われないことを確保するためのモニタリング調査も計画している」と述べた。
約155万人の数字は、貯金営業担当顧客システムが全国の郵便局で導入された2014年2月以降のデータ履歴を確認したものだが、事前同意のないクロスセルを目的とした来局案内を行った事案は、2007年10月の民営・分社化以降、全国規模で継続的に発生していたと考えられる。
会見では、約155万人の算出に際して留意した点が挙げられた。
まずクロスセルに関する同意を得た年月日を貯金営業担当顧客システム上確認できないことから、リスト化の時点で事前同意を得た可能性があるお客さまも、同意を得ていなかったものとして算出している。
また、顧客リスト等に「不適切な来局誘致」である蓋然性が高い保険募集に係る用語を含んでいる事例を抽出している。その他のシステムについても、履歴がない等の理由により確認できていないという。
非公開金融情報の不適切な利用の再発防止策等は以下の通り。
①郵便局における不適切な非公開金融情報等の利用禁止の徹底=9月20日に郵便局宛てに緊急文書を発出し、事前にクロスセル同意を得ていないお客さまの非公開金融情報を利用してリストを作成することや来局案内を行うことなど、不適切な非公開金融情報等の利用の禁止の徹底を通知した。
②貯金営業担当顧客システム等の改修等=9月30日に郵便局宛てに緊急指示文書を発出した通り、10月17日(予定)・2025年2月ごろ(予定)の2段階で、貯金営業担当顧客システム等の非公開金融情報等に関する機能を閉塞する。
③郵便局での来局誘致方法の見直し=郵便局で適切な来局誘致を行う態勢が整うまでの間、アフターフォロー等のために郵便局からお客さまに対し来局をご案内することは停止する。その間、アフターフォローのために、ゆうちょ銀行やかんぽ生命をはじめとする委託元会社から直接お客さまに案内を行う。
④ルールの明確化・社員研修の充実=10月以降順次、全ての郵便局で非公開金融情報等の適切な取扱いが徹底されるよう、非公開金融情報等の取扱いに係るルールを明確化し、研修を実施していく。
⑤モニタリングの強化=郵便局での金融商品販売データ等を基にした、不適切な来局誘致が行われていないかなどの確認を9月30日以降順次している。
⑥クロスセル同意の取得の促進と同意を得た非公開金融情報等を活用するシステム環境整備=日本郵政社長をトップとしたグループ横断的なプロジェクトを設置して推進していく。
⑦本社の役員等の責任の明確化
千田社長は、「法令を遵守したうえで、お客さまに必要なご案内・提案を行うことは、地域のお客さまの生活を支援する郵便局の使命と考えている。今後は、こうした法令違反を決して起こさないよう、まずはお客さま情報の取り扱いについて、社員一人ひとりに研修等を通じて正しい理解・認識を繰り返し浸透させていくとともに、システム面の整備も行うことで社員が安心して、お客さまにサービスをご提供できる環境を整えてまいりたい。こうした環境を整えた上で、郵便局の社会的使命を全うし、お客さま本位のサービス提供に努めてまいりたい」と述べた。
「7項目以外に再発防止策を検討しているのか」との記者からの質問については、「不適切なリスト化・来局誘致をしっかりと防止することがもっとも重要。業務を遂行する際に『これは問題ないか』といった心配をする郵便局もある中で、この点について、システムを閉塞する10月17日までに、皆さんと共通の認識を持つようにしっかりとやってまいりたい」と強調したうえで、「再発防止策という形は、これ以上のものはないと考えている。お客さまを守り、社員を守る対策をきちんと取っていくということが、システム閉塞に勝るとも劣らないほど大事なことだ。そこをしっかりとやっていきたい」と回答した。
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