「通信文化新報」特集記事詳細
2024年11月11日 第7274号
【主な記事】日本郵便 中華郵政と姉妹郵便局協定
熊本・台湾の交流活発化で
九州支社(久田雅嗣支社長)は10月29日、台湾の郵政事業を担う中華郵政股份有限公司(「中華郵政」=王国材董事長)と、熊本県内と台北市内の郵便局を姉妹郵便局とする協定を締結した。姉妹郵便局は民営化後初めて。半導体メーカー「台湾積体電路製造(TSMC)」社の熊本進出に伴う経済的、人的交流の拡大を踏まえ、熊本市と台北市の郵便局同士が幅広い分野で連携、交流することで、両市民のさらなる友好親善と相互理解を促進する。日本郵便の西口彰人代表取締役副社長と中華郵政の蔡文慶副社長が、熊本県の木村敬知事が立会人として協定書に署名した。協定締結を記念したフレーム切手を販売するとともに、日本に中華郵政の、台湾に日本郵便の郵便ポストを設置する。海外のポスト設置も初めて。
協定内容は①相互訪問・視察②熊本台北間のランドマーク(観光・立ち寄りスペース)③郵便・物流の発送支援・金融サービス④物販商品の作成・販売⑤災害発生時の相互援助―などに関することをはじめ、⑥その他、協議にて決定した事項。
協定の対象は、姉妹郵便局になった熊本県の熊本城東(熊本市)、西合志(合志市)、菊陽久保田(菊陽町)、室(大津町)の4郵便局と、台北市の台北北門と台北迪化街の2郵局。
同日、九州支社正面玄関で開催された協定締結式には、日本郵便の西口副社長のほか、久田支社長、宮下民也主幹地区統括局長(熊本西原)、戸髙良二副主幹地区統括局長(大分下郡)、荒木誠一郎地区統括局長(熊本県北部地区連絡会/横島)、姉妹郵便局となる熊本城東局の上村貴博局長、西合志局の重元智典局長、菊陽久保田局の宮本公康局長、室局の永野裕局長らが出席。
中華郵政側は蔡副社長のほか、林立富本社郵便業務部副部長、台北郵局の黃良江局長含め6人が出席。
来賓として台北駐福岡經濟文化辨事處総領事の陳銘俊處長夫妻、木村知事、熊本県議会の坂梨剛昭議員、台熊友好会の徐秋美会長、ゆうちょ銀行の豊田康光執行役・九州エリア本部長、かんぽ生命保険の井上章九州エリア本部長はじめ多数を迎えた。
はじめに、久田支社長が締結式までの経緯を説明した。
①台湾・熊本間での経済的交流の高まり・・・TSMC社が熊本県に進出し、関連企業も含め大きな経済発展、雇用創出の効果が期待されている。両政府、地方自治体などの連携も続いている。
②人的交流の活発化・・・TSMC社進出、関連企業からの出向などにより、台湾から従業員・家族など人の流入が加速、台北―熊本間の旅客・貨物便が就航・増便。コロナ禍が一段落し、また、かつてない円安から観光客が急増し、台湾からの留学生なども増加。地方自治体はじめ、民間団体などの間で文化交流が活発化している。
③被災地として相互支援・・・熊本地方では2016年4月に大地震が二度発生し、どちらも最大震度7を観測。台湾でも、2024年1月に台湾東部沖で最大震度6強の地震が発生。発災直後から双方が官民挙げて緊急支援を実施した。
久田支社長は「強い関係性は今後もさらに発展、拡大していくと思料される。地域に根差し、地域で暮らす人々の生活に密着して支援している両市の郵便局同士が、幅広い分野で連携・交流することで、さらなる友好親善と相互理解の促進などを目指す証として、姉妹郵便局の協定を締結する運びとなった。郵政省時代の1例以外、海外との姉妹郵便局はなく、民営化後の直営郵便局としての締結は日本初で、九州、熊本が第1号となる」と強調した。
西口副社長は「現在の台湾と日本との友好的関係において、郵政分野、郵便局・郵政事業レベルでも、より一層緊密な協力関係を築いていけることは大変喜ばしい。TSMC社をはじめ各企業の進出で、従業員と家族、留学生の方々も大変増えている。異国の地で若干寂しい思いをされることがあると思うが、より快適に生活、仕事ができるよう、郵便局としても可能な範囲で支援をして寄り添っていきたい。今後、中華郵政とともに、共通のイベントやグッズ開発など、関係を深められるような取り組みもしていきたい」と期待を寄せた。
蔡副社長は「両郵政間の協力関係は深く、交流も頻繁に行われてきた。特に、スマート技術などを導入した物流センターの大規模なプロジェクト成功のため、日本郵便の北柏物流センターで、物流管理や技術、先進的な取り組みを実地視察し、多くの貴重な知見を得た。特に物流インフラや運営管理における卓越した技術と先見性は、中華郵政の物流園区建設に大いに役立った。日本郵便から学んだ実践的な知識が反映された中華郵政のA7物流センターは2026年に正式な稼働を予定している。開業式には視察とご指導を賜りたい」と希望した。
「郵便事業が、双方の市場や消費者を繋ぐ橋渡し役として重要な役割を担い、貢献することが可能と確信している。姉妹郵便局の締結は中華郵政にとっても従来にない試み。7月に久田支社長から直接提案があり、わずか3か月で正式な合意に至ることができたのは、双方がこの協力関係を非常に重視し、信頼している証だと感じている。革新的かつ多様な郵便サービス提供を目指し、さらなる成長の機会をもたらし、郵便業務に新たな活力を与える契機となり、友好の架け橋となることを心より期待している」と結んだ。
来賓あいさつでは、陳處長は日本語で「熊本の外国人の増加率は日本一で、24.1%、中でも台湾人が1番多いと聞いている。九州は日本全国の中で一番経済成長が早い。郵便局はコロナ禍、地震、水害にも負けず、山であろうと海であろうと使命を果たし、救援物資を届ける、本当に最も身近で信頼できる素晴らしいパートナー。協定締結による関係強化で、想像を超える以上の展開、より広い分野で色々な可能性が出てくると思う」と語った。
木村知事は「熊本地震、コロナ禍、度重なる困難に対し、県民一丸となって創造的復興に向かって歩んできた。TSMCの熊本県進出という千載一遇のチャンスによる波及効果を県内全域に広げていきたい。熊本県が世界に開かれることで、九州が東アジアの中心となることも夢ではない。経済だけでなく、観光、文化、スポーツにおける交流を率先して進めると同時に、多文化共生という観点も必要となる。姉妹郵便局としての協定と連携は、移住者や観光客の安心や便利さに貢献するとともに、ビジネスチャンスにもつながる素晴らしい取り組み。皆さんの自由な発想と交流により、両地域の友好親善と相互理解、良き流れが更に加速していくことを望む」と、強い期待を示した。(2面につづく)
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