「通信文化新報」特集記事詳細
2024年12月02日 第7277号
【主な記事】おたがいマーケット
奥静岡地域で実証事業
総務省による郵便局等の公的地域基盤連携推進事業「共助型買物サービスと組み合わせた余積を活用した地産品の当日配送サービスによる地域活性化」に関する実証事業デモンストレーションが11月6日、静岡県静岡市奥静岡地域(オクシズ)で実施された。同時に、日本郵便などによる同地域における買い物支援サービスの実証運用がメディアに公開された。
総務省による実証事業は11月1日から令和7年1月31日(予定)まで行われる。日本郵便の配達車両の余積や既存の配達網を活用し、買い物難民の解決に向けて共助型買物サービス(おたがいマーケット)を奥静岡地域と中心市街地の間で実施し(往路)、小規模農家の販路拡大に向けて余積を活用した地産品の当日配送サービスを実施する(復路)。今回の試みによって、地域住民の食料品・日用品等の購入に係るアクセスの向上と、農産品の流通支援による地域産業の振興への寄与を通じ、地域の活性化が期待される。
総務省によれば、日本郵便、楽天、タカラ・エムシーの意向を受けた形で、PwCコンサルティング合同会社を事務局として実証事業に踏み切ったという。
午前中に行われた総務省のデモンストレーションでは、清沢郵便局(同市葵区昼居渡)から、野菜直売所のしんま路(同市葵区新間)を中継地点とし、静岡中央郵便局(同市葵区黒金町)に至る復路が公開された。清沢郵便局と中継地点のしんま路はともに、国道362号沿いに位置し、JR静岡駅から清沢郵便局までの距離はおよそ16.5キロある。
配送には、すでに山形、奈良、岡山で利用されている、地産地消と買物支援をはじめとする地域内流通を支援する配送サービス「ぽすちょこ便」を活用する。1ケースの料金は300円で25キロまで積むことが可能。日本郵便ロジスティクス事業部の宮原悠多係長は、「ぽすちょこ便について4年後には160地域を目途に拡大展開し、5000万円の収益を目指す考え」と話した。
生産者のNPO法人フロンティア清沢(きよさわ里の駅)の幡川恵子代表が地産品2ケースを清沢郵便局に差し出した。品物は、万能調味料「ぶっかけレモン」、レモンカレー、ジャムが各10個ずつ、さつまいも13個。清沢郵便局の社員や中村伸生局長が対応し、静岡中央郵便局の小型配送車両に積み込まれた。
「収益増を期待しているか」との質問に対して、幡川代表は「ものすごく期待している。販路が一つ増えたことで販売数が多くなるのでよかった」と答えた。また、記者団の質問に対して、「いままではスタッフが個別に配送していたが、こんなに近くの清沢郵便局に手軽にお願いできてとても助かる。このあたりの地域では時期物の野菜などが多く生産されるが、市街地で売っていただければ生産者も助かる」と語った。
中村局長は、「街中へその日のうちに届くというのが郵便局の使命でもある。清沢レモンをはじめとした、清沢ブランド品を街中の皆さんに召しあがっていただき、広まったら良いと思う」と述べた。
配送車は、野菜直売所のしんま路で荷下ろしをした後、静岡中央郵便局に向かった。
静岡中央郵便局で、静岡駅ビルにある和紅茶専門店「ニガクナイコウチャ by green eight」の社員が荷物を受け取った。社員は、「お客さまにとっても、清沢地区へ買いに行かなければならなかった商品が当店で買えるというメリットがあるので、SNSなども活用して告知していきたい」と話した。
総務省情報流通行政局郵政行政部企画課の山本和弘課長補佐は、記者からオクシズ地域が選ばれた理由を尋ねられ、「中山間地域の買物支援という形での位置付けだが、数多くある中山間地域の中で、自治体が問題意識を強くお持ちだった。また、物流面での余積があったということも大きい」と述べた。
さらに、「昨年には奈良でも日本郵便は同じような取り組みをしているが、地元スーパーのフードマーケットマムが楽天ネットスーパーの中にすでにネットスーパーの仕組みを持っていたことから、奈良の事例とは違う要素を加えられるのではないかと考えた。地産品の配送に関しては、販路に課題を抱えていたため、販路拡大によって地域活性化に貢献できるのではないかと考え、オクシズ地域を選ばせていただいた」と答えた。
「コミュニティハブという観点からの成果は」との質問に対しては、「まさに地域に足りないものを郵便局で提供していくことが重要。地域に足りないサービスの提供を一元化することによって、郵便局であらゆることを受けられるようにし、地域の持続可能性を確保したい。そうしたコミュニティハブとしての機能を郵便局に担ってほしいと考えており、買物支援は中山間地域どこでも抱えている課題であり、実装に向けても良く練られた取り組みだと考えている」と語った。
静岡中央郵便局の山本浩吏局長は、「地域の皆さんが使っていただいて良かったと思えるサービスを私たちが提供しなければならない。地域とともにどのような形のサービスが一番喜ばれるのかを、これからも検証しながら、取り掛かりとして山間部のものを市街地まで運び、近隣の飲食店を中心に活用していだき、時間や労力を減らしていただくことでお役に立ちたい」と語った。(2面につづく)
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