「通信文化新報」特集記事詳細
2024年12月09日 第7278号
【主な記事】村上誠一郎総務大臣
郵便局を「コミュニティ・ハブ」に
持続可能な地域社会の実現
第二次石破内閣の閣僚として11月11日に再任された村上誠一郎総務大臣。石破内閣は「地方こそ成長の主役」として、地方創生・日本創生を重要施策に挙げる。国民の生活を支える通信・放送・郵政の全国ネットワークや地方自治体を所管する総務省の役割は大きい。少子高齢化や東京一極集中是正などへの対策は継続的に取られているが、人口減少に歯止めがかからない。空き家、空き店舗、買い物難民・・・。地域の課題は多岐にわたる。地方を再生し、地域を元気にする。その方策を村上大臣に聞いた。
■石破内閣は地方創生・日本創生を政策の柱の一つにしています。地方創生において、通信・放送・郵政分野の全国に張り巡らされた各ネットワークはそれを下支えする重要なインフラでもあります。通信・放送・郵政分野において地方創生をより前進させるための施策をお聞かせください。
地方創生は、石破内閣の最重要政策の一つです。総務省としても、デジタル技術の活用やそれを支えるインフラ整備をはじめとする、持続可能な地域社会の実現に取り組んでまいります。
郵政分野では、自立的な地域経済の維持が困難な地域でも住民が必要な公的・生活サービスを今後とも受けられるよう、地域の実情やニーズに応じて郵便局において一元的なサービス提供を図る「コミュニティ・ハブ」としての郵便局の利活用を進めてまいります。
通信分野では、地域社会のDXによる持続可能な地域社会の実現に向け、光ファイバー・5Gなどの通信インフラの整備を推進するとともに、AIなどのデジタル技術を活用した地域課題解決のための自治体や民間の取組を支援し、地方創生の好事例創出やその横展開などに取り組みます。
放送分野では、我が国の放送番組の海外展開を製作支援などによって強力に推進することとしており、我が国の地方の魅力を発信する放送番組が多くの海外視聴者に届くよう、事業者の取り組みを後押ししてまいります。
石破内閣の最重要政策の実現に向けて、情報通信、郵政事業を所管する総務省が果たすべき役割は非常に大きく、関係省庁などとも連携しながら、様々な政策を総動員してまいります。
■2万4000の郵便局ネットワークの利活用と地域住民の生活の利便性向上に向けて、総務省では郵便局をコミュニティ・ハブとして機能させる実証事業を実施していますが、郵便局が地方創生に果たす役割についてお聞かせください。
ご指摘の実証事業は、郵便局と地方自治体などの連携により、地域の課題に対してデジタル技術を活用した解決モデルケースを創出することを目的に、2022年度から実施しているものです。
本年度は広島県安芸太田町において、「郵便局の『コミュニティ・ハブ』としての活用を通じた地域の持続可能性の確保」をテーマに、郵便局において自治体事務の一部を受託するとともに、空きスペースを活用したオンライン診療、オンライン服薬指導を提供するなど郵便局における多様なサービスの一元的な提供に関する実証事業を実施しています。
総務省としては、こうした実証を通じ、郵便局の「コミュニティ・ハブ」としての利活用を進め、地方を守り、持続可能な地域づくりを推進してまいります。
■郵便局が新たな事業を始めるに当たり、ニーズの把握、ニーズに合ったサービスと郵便局利活用の両立、ビジネスとしての採算性の3つをクリアしなければならず、課題も多いと思います。採算性を求められる民間企業と同様の日本郵便が、離島等を含む過疎地で住民が必要とするサービスを提供することについて、総務省はどのように推進していきますか。
人口減少が進む我が国の地域社会において、全国約2万4000局のネットワークを持つ郵便局は、地域の重要な生活インフラとしての役割を担っています。郵便局が持続可能な形で公的な役割を果たしていくためには、日本郵便において地域のニーズを踏まえるとともに、ビジネスとしての採算性も含め事業としての検討を行うことが求められます。
総務省では、2025年度についても、自治体が郵便局を「コミュニティ・ハブ」として活用し、地域住民の必要なサービスを提供する実証事業を行うべく、必要な予算を要求しており、郵便局が持続可能な形で、地域に貢献する役割を果たせるよう、その利活用に当たっての採算性を含めた課題などの整理に取り組んでまいります。
■能登半島地震では、一時的に情報にアクセスできない事態が発生し、通信・放送インフラの強靭化や国民の安全・安心の確保が課題になりました。具体的な取り組みについてお聞かせください。
通信・放送は、電気・ガス・水道に並ぶ国民生活にとって欠かせないライフラインであり、能登半島地震では、停電や光ファイバーの断絶などにより、携帯電話基地局の稼働停止やケーブルテレビ・地上波放送の停波が発生しました。こうした自然災害の教訓を踏まえ、通信・放送インフラの更なる強靱化や、早期復旧に向けた官民連携の体制強化が重要です。
総務省としても、災害時に信頼できる情報を国民に届けることができるよう、事業者が行う通信・放送インフラの強靱化の取り組みに対する財政的支援や、関係者間の連携体制強化を通じた緊急対応力の強化を進めてまいります。
放送については、地上波中継局の送信所設備などの災害復旧や局舎・鉄塔の耐震対策などによる耐災害性強化、ケーブルテレビ網の災害復旧やケーブルテレビの回線の光ファイバーへの切替・2ルート化などによる耐災害性強化を支援してまいります。
通信については、携帯電話基地局の強靱化や移動基地局等の拡充による復旧体制の強化、事業者間ローミングの導入、被災地における通信確保と被災状況把握に官民連携で対応する体制の計画的な整備に取り組んでまいります。
災害情報を共有するLアラートの信頼性向上、他システムとの連携強化に向けて取り組みます。
これらの取り組みを通じて、国民・住民の安全・安心な暮らしを守ってまいります。
>戻る