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2024年12月16日 第7279号

【主な記事】

スポーツ・健康分野で連携
日本郵政 立命館と交流協定

郵便局ネット活用も
千葉 スポーツ&コミュニケーション部 部長

櫻井常務執行役㊧と立命館の伊坂副総長


 日本郵政と学校法人立命館(京都府京都市/森島朋三理事長)は12月2日、「スポーツ・健康分野における包括的連携交流協定」を締結した。同日、東京・新宿のJAPAN SPORT OLYMPIC SQUAREで日本郵政の櫻井誠常務執行役と学校法人立命館の伊坂忠夫副総長が出席し、締結式が行われた。
 日本郵政と立命館が相互に尊重し、対等・平等で自主性に基づいた包括的連携交流を実施することによって、スポーツ・健康分野での学術研究・教育・地域社会の発展と人材の育成等に貢献していくことを目的としている。両者は、有する情報やネットワーク、人的・物的資源等の利活用・コラボレーションが、地域のスポーツ推進・コミュニティ創出や健康寿命の延伸等、多様な地域課題の解決に寄与するものと見ている。全国に広がる日本郵政のネットワークと立命館の教育・研究リソースを活用し、地域課題の解決やWell―beingの推進に向けた新たな価値創造を目指していく考えだ。
 式典の席で櫻井常務執行役は、「学校法人立命館が保有している、スポーツ・健康に関する知見を共有いただけるとともに、グループ社員の健康増進に加え、全国の郵便局ネットワークを通じた地域の健康増進への取り組み、地域活性化に向けた情報発信・人材交流、部活の地域展開などで協働させていただくことになった」と述べ、「産学の協働に端を発して、将来的には地域の自治体も一緒になった、新しい情報発信・取り組み、および多様な社会課題の解決に向けて何が出来るかを楽しみにしている」とあいさつした。
 伊坂副総長は、「私たちはスポーツを通じた地域社会の活性化と健康増進を目指し、両組織の強みを活かした連携を進める中で、スポーツが社会活性化などに寄与する価値を高めてまいりたい」と述べた。
 立命館が2014年に制定した「立命館スポーツ宣言」には「スポーツを通じて老若男女を超えた地域コミュニティの形成と発展に携わる、地域社会の健康で豊かなコミュニティ作りに貢献することを社会的役割のひとつとする」と掲げられている。立命館には、スポーツ・健康に関わる学部・大学院・研究所があり、教育・健康に関わる資源を活用するプラットフォームがそろっており、スポーツ庁やUNIVAS(一般社団法人大学スポーツ協会)からの委託事業などを通じて、地域のニーズ・課題に向き合いながら、スポーツ推進や健康増進に資する様々な取り組みを進めてきた。
 日本郵政は、スポーツを通じた企業価値の向上と社会貢献を目的に、スポーツ&コミュニケーション部を設置し、「スポーツのチカラでニッポンをゲンキに! powered by TeamJP」とのキーメッセージを掲げて様々な取り組みを展開している。宮城県で開催されたクイーンズ駅伝で見事優勝を果たした女子陸上部の活躍にとどまらず、スポーツプロモーションを推進する観点から、全国の部活動における指導者不足の解決や「運動をもっと気軽に楽しく」とのコンセプトのもと、「カラダうごかせ!ニッポン」プロジェクトを展開するなど、社会課題に対する積極的な取り組みを進めている。
 式典の後半に、日本郵政スポーツ&コミュニケーション部の千葉岳志部長が概要を説明した。
 協定に基づく具体的な取り組み予定としては、まず日本郵政と立命館が「スポーツを通じた価値創造協議会」を発足させる。以下の具体的な取り組み事項について協議・検討する会議体として運営を行う。
 ①学術研究・人材育成に関する事項=日本郵政グループ社員や地域住民、学生アスリート、スポーツ指導者等を対象に、スポーツや健康増進等をテーマとしたセミナーを日本郵政と立命館で共催する。同セミナーは、オンライン開催の他、立命館が全国に保有するリソース(キャンパス、付属校等)の活用も検討していく。
 ②地域・社会に向けた健康維持・増進に関する事項=立命館は日本郵政が日本郵政グループスポーツ応援アンバサダー「ももいろクローバーZ」と共に取り組む「カラダうごかせ!ニッポン」プロジェクトと連携し、立命館が主催・協力するイベント等で「MEKIMEKI 体操~カラダうごかせ!ニッポン!~」を積極的に実施することにより、地域・社会に向けた健康維持・増進活動を推進する。協定締結に先駆けて、11月10日に立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催された「びわこ・くさつ健幸フェスタ 2024 BKCウェルカムデー」で「MEKIMEKI 体操」を実施した。
 ③スポーツを通じた地域・社会貢献に資する事項=日本郵政は立命館が主催・協力するスポーツイベント、地域のスポーツ推進・健康増進を目的とした「びわこ・くさつ Well―being コンソーシアム事業」などへの参画を検討する。
 ④学校部活動の地域連携・地域移行の支援に関する事項=学校部活動の外部指導者育成のために大学生のスポーツ指導者資格(JSPO公認スポーツコーチングリーダー)の取得促進についてのアプローチを協議する。立命館の各キャンパス周辺の自治体が推進する部活動の地域連携・地域移行に関して、立命館大学スポーツ健康科学部・スポーツ健康科学研究科、スポーツ健康科学総合研究所などの立命館の人的・物的リソースと、日本郵政が理事を務めるブカツ・サポート・コンソーシアム(今年9月10日設立)のリソースをかけ合わせて、その課題解決を支援する。
 ⑤アスリートのセカンドキャリア創出に関する事項=立命館に関係するアスリート(在学生・卒業生等)、日本郵政グループ女子陸上部の現役選手やOGを中心に、アスリートが競技活動やその他スポーツ活動(地域でのスポーツ指導等)と並行して、学術的な探究・研究活動を行うなかでセカンドキャリアを形成していくことのできる仕組みづくり(プログラム等)を検討する。 


 式典終了後に、日本郵政スポーツ&コミュニケーション部の千葉部長に話を聞いた。
■今回の協定では、立命館の人的・物的リソースやノウハウを共有できることが大きいと思うが。
 立命館大学のスポーツ健康科学部がメインの提携先となる。そういう意味では、スポーツ&コミュニケーション部が取り組んでいるスポーツと健康増進の様々な施策とうまくマッチングする見通しだ。女子陸上部、MEKIMEKI体操、ブカツ(部活)という3つの柱に加え、社員の健康増進を重視する観点から見ても、すべてがマッチする。地理的にみると、東京と滋賀県のびわこ・くさつキャンパス(BKC)は離れているが、リモートなどの工夫によって乗り越えられるため、それほど問題にはならないと考えている。
■BKCがある滋賀県には、約230局の郵便局があるが、郵便局との関係は。
 本社が単独で取り組めることは少ない。日本郵政と立命館が設立する「スポーツを通じた価値創造協議会」で様々な議論を進める中で、地域の郵便局が参画してくるような企画が提案される可能性もある。その際には、事前のコミュニケーションを行い、理解を得た上で、立命館大学と近隣の郵便局などの繋がりを作っていきたい。
■指導者の育成や健康増進の観点から、郵便局ネットワークを活用する可能性はあるのか。
 これから協議が始まるので未確定だが、立命館のキャンパスを使うだけではなく、いろいろな場所を活用できるのが望ましいと考えている。そういった観点から、郵便局が候補になる可能性もある。その場合には、近畿支社および各地区連絡会と良く話し合ったうえで、実現可能か否かなどフィージビリティも考えながら、社員の負担にならず、逆にプラスになるようなやり方を選定し、一つひとつ丁寧に話し合いをしながら進めていきたい。
■部活動の指導者としてグループの社員を現場に送り込む際に、スポーツコーチングリーダーという日本スポーツ協会公認の指導者資格を取得してもらうことになっており、4月にオンラインでの養成講座による「公認スポーツコーチングリーダー」という資格制度が創設されたが、グループ社員の資格取得はどのような状況か。
 2024年度の上期の募集では、日本郵政グループからは266人が資格を取得した。下期についても160人の応募がある。日本郵便が約9割を占め、その多くがエリアマネジメント局からの応募となっている。グループとしての指導者の人材バンク的なものを作っていくことで、学校部活動の地域連携・地域移行を支援する「ブカツ・サポート・コンソーシアム(通称「ブカサポ」)」(本紙9月30日付参照)を全国展開していった時に、部活動の地域ニーズに応じた適材適所の人材提供を実現する可能性を高めていきたい。 


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