「通信文化新報」特集記事詳細
2025年01月20日 第7284号
【主な記事】
算定基準、透明性確保を
郵便料金政策委 需要予測の正確性も
第6回情報通信審議会郵政政策部会郵便料金政策委員会(山内弘隆主査)が12月25日、総務省で開かれた。全国消費者団体連絡会のヒアリングや同委員会の取りまとめに向けての方向性などについて議論した。郵便料金の算定基準の作成やその透明性、国民の理解などについて意見交換した。
全国消費者団体連絡会からは「家計の見通しを立てやすくするためにも急な大幅値上げでなく、段階的な引き上げを検討してもらいたい」「国民が値上げを適正かどうか判断するためにも、透明性・適正性のある料金設定として郵便料金の算定基準を定める必要がある」「ユニバーサルサービスを継続していけるよう、郵便へのニーズの変化や国民に分かる議論の方法も踏まえて、抜本的な改善を検討するべき」「サービスが低下する中での値上げは国民の納得が得られず、更なる郵便離れにつながるのではないか」などの意見が出された。
郵便の信頼性についての質問があり、同連絡会は「SNSなどでいろんな情報を受け取るが個人情報の漏洩もある。郵便で来る行政からの大切なお便りは必ず開けるし、郵便だからこそ信頼して利用できる」と郵便に対して一定の信頼にも言及した。
取りまとめに向けての議論の方向性については委員から、郵便料金の算定基準や議論の透明性、ユニバーサルサービス基準や範囲、需要予測などについて意見が出された。
実積寿也専門委員は「サービスレベルを下げて料金を上げれば利用者負担になる。赤字を残していけば最終的に国民負担になる。負担の分かち合いを考えなければならない。それには透明性が必要。途中の議論も含めて公開する必要がある。公開すれば第三者の検証が可能で負担の納得感が得られる。議論は多くの人を巻き込んでもらいたい」という意見。
関口博正専門委員は「算定の明示化がこれからの検討テーマになる。郵便事業は、人件費の比率が高い。残りは委託運送費。これから値上がりするものばかり。コスト削減の努力と比べてはるかに需要が落ち込んでいく。算定根拠は需要予測の正確性に掛かっている。需要の減少をどう反映されていくかが重要なポイントになる」と発言した。
荒牧知子委員は「ユニバーサルサービスの見直しをしたうえで、いくら掛かるのかという原価計算が必要。コストをすべて転嫁すれば消費者の反発が大きい。消費者物価レベルで転嫁していく場合、埋まらない部分をサービスの見直しや公的負担、適正な利潤に対する法的な部分も含めて合わせ技でしていかないと抜本的な改革は難しいのではないか」。
今後の同委員会の進め方について東條吉純主査代理は「ユニバーサルサービスの水準は今回は扱わないが、次のステップを踏まえた取りまとめが必要。適正な原価計算を基に、精度の高い算定基準を定めていきたい」と提言した。
同委員会事務局の総務省・折笠史典郵便課長は「これまでは値上げの過程で算定基準が明確でなかった。値上げするに当たりどのようなコストが掛かっているのか、国民に対する説明責任を果たさなければならない。郵便事業収支の見通しについていかにして透明性を確保するのか。国民に見えるようにする仕組みを検討したい」と方向性を示した。
事務局の論点整理では、委員からの算定基準については「適正な原価について明らかにすることが必要で、原価に含める費用項目の範囲や荷物事業等との配賦計算の適正性などについて考え方を整理する必要がある」「郵便料金を頻繁に見直すような場合には、効率化努力も徹底して行う必要がある旨の意見があり、合わせて、コスト削減努力は算定基準等の中で議論していくとの意見もあった。一定の費用効率化の取り組みを算定基準などに組み込むことなどが必要ではないか」。
規制に係る意見として、「上限料金の運用については簡素化した手続が望ましい」「郵便料金の設定に当たり、より主体的・機動的に対応可能な制度へ見直す場合、その手法の検討に当たっては、利用者保護の観点や、手続の実行性の確保、効率化努力の徹底を求めるといった不必要な値上げを抑制する仕組みについて留意が必要」など。
今後の検討課題として「郵便ユニバーサルサービスは全てのサービスが必要なのかどうか、配達回数等の議論を含め、様々な選択肢を分析する必要がある」「郵便ユニバーサルサービスの考え方自体を国全体で考えていかなければならない」「公的な財政支援については、郵便ユニバーサルサービスの見直しを含めたコストの分析と、適正な利潤の定義づけを含めた十分な議論をした上で議論されるべき」「公的資金による支援をストレートに主張するだけでなく、価格やサービスの質に選択肢を設けるなどできる範囲で他に何か方策がないのかということを、みんなで討論していけるようにしてもらいたい」「第三種・第四種郵便物は、通信教育や種苗、学術刊行物等については過去の議論をスタートラインとして検討を進めるべき。まず可能な範囲で赤字を回避していく料金値上げをするのが一番現実的な選択肢」などがあった。
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