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2025年03月03日 第7290号
【主な記事】
東京─大阪で「レベル4」計画
日本郵便JPロジ 自動運転実験に参加
日本郵便は2月6日、JPロジスティクス(安達章代表取締役社長)と昨年12月に参加を発表したセイノーホールディングス(田口義隆取締役社長)と株式会社T2(森本成城代表取締役CEO)による自動運転トラック幹線輸送の実証実験について、今後の展望と現状を日本郵便本社で説明した。
説明会には日本郵便の仲谷重則郵便・物流ネットワーク部長、T2の高橋広之事業開発本部物流企画部長、西濃運輸の渡辺俊幸運行部運行課参事が出席した。
幹線輸送とは周辺エリアの荷物を集めた拠点から他の拠点まで大型トラックで輸送することで、トラックの自動運転を可能にすることにより2024年問題やドライバー不足問題の緩和を目指す。トラックに搭載された自動運行装置が高速道路上ですべての運転を行う「レベル4」の前段階「レベル2」実験から、日本郵便とJPロジスティクスが参加した。
「レベル2」では大型トラックが自動運転するものの、ドライバーが同乗してハンドルに手を添え、万一不測の事態が発生した場合には迅速に対応できる状態で行う。
最初にT2の高橋部長が実証実験の主旨と自動運転トラックの幹線輸送サービス実現に向けた展開について説明。「物流の2024年問題により、現状の輸送業界はドライバー不足が危機的な状況にある。2028年度の予測ではドライバー需要117万人のところ、89万人の供給しかない。2030年度の経済損失は7.5兆円から10.2兆円が見込まれる。
また長距離ドライバーは2日に1回しか家に帰れず、ドライバーの疲労は大型車の交通事故の原因にもなってしまう」と述べ、大型トラックの自動運転実用化の必要性を説いた。
その改善策として、「2024年10月からT2とセイノー運輸で沼津・浜松間の116キロでレベル2の実証実験を行った。1月からは日本郵便とJPロジスティクスにも物流施設と貨物の提供という形で参加いただき、2月12日から13日にかけてJPロジスティクスの相模原支店から大阪南港支店まで、2月13日から14日には新大阪郵便局から神奈川西郵便局まで自動運転の実験を行う。以降はより長距離の実験を行う予定で、沼津・豊田東間の約180㌔、御殿場・久御山の約370㌔、厚木・久御山の約400㌔の実験を予定している」と述べた。
日本郵便の仲谷部長は、「日本郵便もドライバー不足は喫緊の課題と認識している。郵便物流サービス維持のために、自動運転車両には大きな期待をしている。レベル2からレベル4に向けて技術開発をする中で、日本郵便はレベル2から参加して支援・協力することが重要と考える。高速道路をトラックが自動運転で走ること自体まだ社会的に認知されていない。将来に向けてこうした無人トラックが走ることをまず社会に認知・理解してもらうことが大切。今回はそうした期待もこめて参加した。長距離トラックの自動運転はドライバー不足に貢献するので大いに期待している」と述べ、日本郵便が実証実験に参加する意義と必要性を語った。
実証実験は順調に進行しているが、これからの課題として高橋部長は「高速道路は排水の関係で微妙に左側に傾いている。また区間によっては路面の凹凸が激しいため、それに対応した微妙な調整が必要。道路上ではどんな不測の事態が発生するか分からず、急に前方に割り込んでくる車もいる。そうした場合でも安全に運行できるよう自動運転技術を向上させなければならない」とした。
レベル2自動運転トラックを用いた輸送事業は今年7月から実用化し、2027年4月からレベル4自動運転事業を東京・大阪間で行う計画。
さらに2029年度中には事業エリアを九州と四国に拡大し、2031年度にはトラック2000台規模での輸送を行う事業計画になっている。
説明を担当した各企業は、「自動運転トラック幹線輸送の実現だけで2024年度問題やドライバー不足問題がすべて解決できるわけではないが、大きな効果はあると思う。私たち4社がそのさきがけとなって業界の問題改善に取り組んでまいりたい」と語った。
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