「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2025年03月10日 第7291号

【主な記事】

日本郵便 トナミホールディングス買収
幹線輸送ネットワークを統合
多様なニーズに対応、収益拡大へ

 日本郵便は2月26日、子会社のJWT株式会社(東京都千代田区/美並義人代表取締役)を通じ、東証プライム市場上場の物流会社トナミホールディングス株式会社(富山県高岡市/髙田和夫社長)を買収すると発表した。同社普通株式取得のため、金融商品取引法によるTOB(公開買付け)およびスクイーズアウト(少数の株主や特定の株主から株式を取得する手法)を通じ非上場化を実施する考え。取引後には、トナミHDは日本郵便の連結子会社になる。
 日本郵便にとっての戦略的意義は、国内企業間物流の強化にある。トナミHDは、ドライバー数4406人、倉庫保管面積889千㎡、車両台数5115台の人的・製造資本を持ち、主力事業は、運送事業(特積み輸送)で、中・大口の幹線輸送に強みを持つ。国内に広がる強靭な幹線輸送ネットワークへと統合させることで、収益規模のさらなる拡大を図る。
 これまで、日本郵便の国内企業間物流は、西日本中心のJPロジスティクス(売上617億円)が担っており、関東・北陸・中部中心のトナミHD(売上1421億円)が加わることによって、ネットワークの拡大を見込むことができる。
 また、顧客の多様なニーズに対し、迅速かつきめ細やかなグループ一体サービス提供を可能にすることで、価格交渉力を強化することも視野に入れる。
 トナミHDのマネジメント・バイアウト(MBO)を企図し、創業家代表・経営陣・日本郵便の共同コンソーシアムによる公開買付けを実施する。共同出資者は、創業家代表の綿貫雄介氏、経営陣(トナミホールディングスの髙田和夫社長・髙田一哉取締役・トナミホールディング佐藤公昭取締役)、日本郵便の3者。
 3者が各々買い付けを行うのは制度上難しいため、共同コンソーシアム(JWT株式会社)を結成し、トナミHDの株式100%取得手続きを開始する。JWTは、手続き終了後速やかに、JPトナミグループ株式会社に名称を変更する。創業家代表・経営陣は買収成立後もトナミHDの経営に継続してあたる。
 公開買付届出当初の買付けなどの期間は、2月27日から4月10日までの30営業日を予定している。TOB価格1万200円での100%株式取得金額は総額926億円(うち日本郵便の出資750億円)の見通し。
 トナミHDとしては、厳しい経営環境変化の中で上場を維持するメリットが相対的に低下しており、経営陣および創業家による非上場化の道を模索していたが、成長のためには外部の経営資源も活用することが必須と判断した。日本郵便とトナミHDが意見交換などを継続的に実施した結果、双方にとって最適なパートナーであるという認識に至った。
 会見に当たった日本郵便の行木司執行役員は、「国内の郵便局以外のことを考えると、国内のBtoBが非常に手薄であるため、トナミHDと一緒に事業を進めていく形にすることによって、グループ全体のシナジーも生まれ、損益も向上できると考えている」と述べたうえで、「トナミHDの経営体制を基本的にベースとし、そこに日本郵便のメンバーも加わり、ウイン・ウインの関係を構築していきたい」と展望を語った。
 公開買付手続きが終了した段階で速やかに、経緯や今後の戦略について発表を行う予定だ。 


>戻る

ページTOPへ