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2025年04月07日 第7295号

【主な記事】

福島県郡山市 品川萬里市長 郵政事業、未来を予見し何をすべきか考えて
支えあい活力ある社会を
子どもが安心して育つまちへ
 


 郵政官僚として東北郵政局長、貯金局長、放送行政局長、郵政審議官(国際担当)などを歴任した品川萬里氏は、NTTデータ副社長などを経て、2013年4月に郡山市長に就任。以来3期12年にわたって市長を務め、市の発展を牽引するとともに郵便局との連携を推進してきた。先手先手で取り組む「フィードフォワード」を重視する品川市長は、郵政事業も未来を予見し、将来のミッションを描き、そのために今何をすべきなのかを考えてほしいと強調する。
 
■3期12年間、市長を務めてこられました。「ウェルビーイングなまち郡山」の実現を、どんな思いで目指してこられたのでしょうか。
 郡山市は、2019年7月に内閣府から福島県内初の「SDGs未来都市」に選定されました。「郡山市SDGs未来都市計画」では、ウェルビーイングの考え方を基本に据えて、2030年のあるべき姿を目指し、各種施策を推進しています。目指しているのは「すべての人々がともに支えあい、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会」です。
 こうした取組みを評価していただき、今年1月に発表された「第4回日経グローカルSDGs先進度調査結果」では、郡山市は県内1位、東北では仙台に続き2位、中核市では3位になりました。
 現在、人口減少、少子高齢化、気候変動、デジタル化など、時代の大きな転換期に直面しています。こうした中で、未来のあるべき姿を描き、そこから現在にさかのぼって何をすべきかを考える「バックキャスティング思考」とともに、未来に向けて先手を打つ「フィードフォワード」の視点が必要だと思っています。
 次の100年を見据えて、SDGs、セーフコミュニティ、DX、Z世代活躍などの取り組みをさらに推進し、心身の健康や、自然環境、雇用、子育て、地域社会などあらゆる分野での施策を総合的に向上させていくことが重要です。
■子育て環境整備促進(ベビーファースト)にも力を入れてきました。
 郡山市は、2022年7月に「ベビーファースト運動」への参画を宣言し、市民・事業者の皆さん、市が一体となり、地域ぐるみで「子どもが安心して産まれ育つまち郡山」の実現を目指しています。
 2013年に39箇所だった認可保育施設は、現在、89箇所まで増やし、4月1日時点の国基準待機児童は、2021年から4年連続でゼロを達成しています。また、子育て世帯への負担を軽減するため、市独自に認可保育施設などの第一子保育料の無料化・軽減を行うとともに、憲法第26条第2項に従い、小中学校の給食費を全額公費負担としました。相談事業の充実にも努め、2020年には、県内初となる「LINE子ども・子育て相談事業」を開始しました。
 さらに、2024年度からは、保育所等に通っていない満3歳未満の子どもが、保護者の就労要件を問わず、一定時間(月10時間)、保育所、認定こども園、幼稚園などに通うことができる「こども誰でも通園制度」の試行事業を他市に先駆けて実施しました。
 これまでの取り組みの結果、市の子育て関連予算は、5年前の約291億円から2025年度は約400億円と、37・5%増加しました。
■「こおりやま広域連携中枢都市圏」による市町村連携を進めてきました。
 人口減少、少子高齢化が進む中で、地理的、歴史的、文化的にも密接な関係にある近隣市町村が連携し、広域的課題を解決することが目的です。
 2019年3月に郡山市を連携中枢都市とした近隣15市町村で形成し、2021年3月に二本松市、2022年2月に磐梯町が参加し、現在では17市町村で形成しています。圏域の人口は約60万人に上り、県全体の約1/3を占めています。面積は約3373平方㌔㍍で、県全体の1/4を占めています。
 圏域内には、半導体関連産業や化学・医療・食品・観光など様々な分野の優れた企業が立地しています。こうした企業が世界最先端の学術研究機関と連携して、研究開発を推進しており、地域経済活動の活性化に貢献しています。
 昨年3月に策定した第2期「こおりやま広域連携中枢都市圏ビジョン」では、各分野で87の連携事業に取り組んでいます。連携市町村間の職員相互派遣制度の整備、図書館や生涯学習施設などの広域利用促進、病児・病後児保育の圏域市町村受け入れなど、スケールメリットを生かした効果的・効率的な事業を進めています。「広め合う、高め合う、助け合う」を合言葉に、持続可能な関係を深化させています。
 また、2022年2月には17市町村と21事業体との包括連携協定として「公民協奏パートナーシップ協定」を締結しました。福島大学、日本大学工学部、生保・損保業界などが参加しており、行政と企業・団体が双方の強みを生かして、相互に競争力を高め合うのが狙いです。(2面につづく)


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