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2025年04月14日 第7296号

【主な記事】

日本郵政、日本郵便の新社長 次期中経の策定を託す
根岸氏 グループ一体の経営を進める
小池氏 強みを活かし成長ステージへ

(左から)根岸常務執行役、増田社長、千田社長、小池常務執行役員


 日本郵政、日本郵便は4月2日、東京・大手町のJPタワーで増田寛也社長、千田哲也社長ならびに社長候補の根岸一行常務執行役、小池信也常務執行役員による記者会見を開いた。両社長とも「大幅な若返りを図ること」を念頭に置いて選考を行ったことを明らかにした。両名が社長に就任すれば、現役支社長から初の社長登用となる。増田社長、千田社長ともに会長職に就くことには否定的な見解を示した。
 
 日本郵政の増田寛也社長は、2020年の1月に社長に就任して以来5年半にわたる任期を終え退任する。後任として、日本郵政の根岸一行常務執行役(3月31日まで日本郵便常務執行役員・東海支社長を兼務)が社長に就任する。
 2023年6月に就任した、日本郵便の千田哲也社長も、2年の任期を終え株主総会の日をもって退任する。後任には、日本郵便の小池信也常務執行役員・近畿支社長が就く。
 増田社長は、「4、5月から次期中期経営計画の策定作業が本格化するため、この時期が交代の時と判断した」と退任理由を説明し、根岸社長候補については、「鋭敏な感覚を持つ、次世代のエース的な存在だ。同世代では、本社の常務に一番早く就任した後、支社のトップも経験している。大幅な若返りを図る中で、今回次期社長として就任する」と評した。
 根岸常務は、「指名された以上は、重責ではあるが、真摯かつ謙虚に取り組んでまいりたい。郵政省に採用されて以来、31年になるが、このうち25年以上を郵政事業に携わってきた。今回の指名は、郵便局をはじめとして、フロントラインに近い感覚を事業経営に生かすということだと認識している」と述べた。
 「お客さまから見ると、すべては郵便局ということになるので、郵便局の目線、お客さまの目線で、グループ一体の経営をさらに進め、適切なガバナンス、リソース配分、リスクコントロールをしながら、郵政ネットワークを全体として最大限活用することによって、地域や株主の皆さまなど、様々な方々の期待に応えてまいりたい」と抱負を語り、「郵便局、郵政のネットワークに対する期待はまだまだ大きいものがあると感じている。これまで取り組んできた、自治体をはじめとする地域ニーズに応じた郵便局の活用や、保有不動産を活用した地域の再開発事業の参画などの取り組みの速度をさらに上げていきたい」との考えを示した。
 また、「2025年は、中期経営計画の最終年度であり、現在仕掛っている施策については、着実に推進していくことは重要だが、夏以降は次期中期経営計画を検討することになるので、共創プラットフォームの実現を目指して着実な成果に繋げてまいりたい」との見通しを述べた。
 千田社長は、「ちょうど今から2026年度以降の次期中期経営計画を策定する節目の時期になることから、これからの日本郵政グループを担う若いリーダーが中心となって、次期中期経営計画の策定をしてもらった方が良いと考え、このタイミングで退任することとした」と退任理由を説明した。
 小池常務については、「今も直属の部下であり、現在は近畿支社長として活躍している。小池さんは、郵便・物流事業にも精通されており、冷静沈着な判断と事業に対する情熱を持った人物だ。私が社長就任以降進めてきた改革については、概ね継承していただけると思っている」と語り、「ガバナンスに関しては不十分であったと反省をしており、小池さんに深化していただけるように、残された3か月でどのように進めて行けば良いか、お互いに話をしていきたい」と述べた。
 小池常務は、「地域に密着した仕事がしたいという思いから、1992年に郵政省に入省し、約四半世紀にわたって郵政事業に携わってきた。咋年度は、近畿支社長に就任し、現場に近いところで深く業務に携わることができ、大変有意義な経験をした」と自己紹介し、「これまでの経験を活かしつつ、グループ組織が持つ資源を最大限に活用して成長ステージに乗せていけるよう、各事業の強みを活かしながら、全体最適を目指してまいりたい」と述べた。
 社長人事の経緯について記者から問われた増田社長は、「昨年時点の指名委員会では、今年の6月の交代を前提に話をしていた。指名委員会での後任の人選については、二通りの考え方があった。これまでは外部から社長を迎え入れていた。外部に優れた経営者がいれば有力な候補ということになるが、一昨年までの早い段階でいろいろと打診をしてきた。咋年は、内部の中から選ぶプロセスに入った」と明かした。
 「外部がいなかったから内部かというと、当初から指名委員の中でも、外部から迎え入れることが続いていたので、郵政事業庁、公社、民営化ということで、事業体としても25年ほどの歴史があり、特に民営化後に入った社員のモチベーション向上に繋がるので、内部登用を考えるのは重要だと意見があった」と語った。
 そのうえで、「内部登用を図るうえでどのような資質が必要かについて、昨年に指名委員の皆さんと議論をした。その中で若い人に思い切ってバトンタッチをして、周辺できちんとサポートするという形が良い態勢ではないかということになった」と明らかにした。2人の社長候補について「まさに事業体の生え抜きと言って良いと思う。事業の様々な面を見聞きしていることを重要視した」と選考理由を語った。
 千田社長も「今年に入って、増田社長と新しい態勢をどうするかと話し合う機会が数回あった。日本郵便の社長就任前に、かんぽ生命の社長に2020年の1月に就任しているので、増田社長と同じ5年半が経つことに加え、25年度というのは次期中期経営計画の策定をしていく節目の年になるため、中計を作った人が実行していくのが良いのではないかと考えた。なおかつ、世代を思い切り若返らせるというご意思を感じた。それを受けて、本当にその通りだと思った」と経緯を明かした。
 そして「日本郵便の社長人事をどのようにしようかと考えた時に、近畿支社長を務めている、私よりも9歳くらい下の小池さんが一番相応しいのではないかと考え、増田社長とも相談して3月に入ってから小池さんに話をして、28日に開かれた取締役会で全員の同意をいただいて発表した」と語った。
 郵便局ネットワークを活用した事業の具体化の質問に、根岸常務は、「支社長の経験から申し上げると、一義的には、自治体からもう少し郵便局を活用したいという声を直接聞いている。地方のコミュニティを支える組合組織が少なくなっているので、その中で郵便局の支援が出てくる部分があると思う」としたうえで、「都市部とは違った点もあるので、原点は自治体との連携をいかに進めていくのかということだ。それを足掛かりにして、地域ごとの実情に応じて、創意工夫が出来る態勢を整備する基盤作りに取り組んでまいりたい」と構想を述べた。
 「支社長として経験した中で見出したことは」との問いについて、小池常務は、「二つ申し上げたいと思う。まず、ユニバーサルサービスの果たす意味や重要性を実感することができた。山がちな離島を訪れた時、船で渡ったうえで、四輪が入れず二輪でピストン輸送して配達するのを見た。そこまでやってお客さまに大変喜ばれている。そういう姿を間近に見て、競合相手と競いながらどのように採算を取っていくのか、利益を出すのか。その点の深掘りが重要だと思っている」と述べた。
 また「二つ目は自治体との関係。郵便局への様々なニーズがあることを自治体の方々と話し合って分かった。それを活かし切れていないということを感じた。ニーズをお聞きしながら、もう少しうまくご利用いただくよう具体化をどのように進めるのか。買物支援のみならず他の分野でも存在するものと思っている」と語った。
 増田社長は、「支社長を経験していることは、選考のポイントになった」と述べ、その背景を説明した。
 「郵便局を舞台に仕事をするというのが当社の事業モデルなので、郵便局にできるだけ近いところにいた方が、様々な新しい事業を行っていく時に、フロントの人たちがどのような受け取り方をするかを良く理解できる」と述べ、「本社や支社から来る大量の指示文書がどういう形で受け取られているか。できるだけフロントで克明に郵便局を回って聞いてもらうためには、本社からではなく、現場に非常に近いところで難しい意思決定を自分の責任で行う資質が重要だ」と強調した。
 「支社の立場から本社の足らざるところを見ることも役立つと思う。私が就任してから、何人かを支社長に着任させ、経験を活かして戻って来て枢要な役職に就いているが、若い2人にはそういう経験を積ませたいと思った」と明かした。
 「もうひとつは、郵便局の機能・役割が自治体から見ると相当可能性があり、郵便局を単に金融商品や荷物を扱うということではない位置付けで見ているケースが非常に多い。地元の首長への紹介もして、知事や市長のところに行ってもらったりしているが、その辺りの肌感覚というのを養ってもらううえでは、支社長の経験はプラスになる」と利点を述べた。


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