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2025年06月09日 第7304号

【主な記事】

「デジタルアドレス」開始
日本郵便付加価値を提供
住所を7ケタの英数字で表現
物流企業にも開放 社会インフラ目指す

   日本郵便は5月26日、新サービス「デジタルアドレス」の提供を開始した。「ゆうID」に登録している住所を7ケタの英数字として取得・利用できるサービス。住所入力の簡略化や各種サービスでの利便性向上など、個人ユーザーや事業者に対して付加価値を提供する。まず個人・法人向けデジタルアドレスの導入拡大を図り、将来的には、デジタルアドレスを活用することによって郵便・物流事業/物流業界への貢献も目指す。
 
 開始時点では、郵便局アプリのゆうパック・ゆうパケットの「送り状作成機能」での利用が可能となる。アプリの「デジタルアドレス」入力欄に7ケタの英数字を入力することで、「ゆうID」に登録済みの住所が自動的に反映される。4月末現在で約1500万人が「ゆうID」に登録しているという。
 今後、日本郵便内外におけるサービス連携の拡大を予定しており、同日に事業者向けの「郵便番号・デジタルアドレス API」の無料提供を開始した。
 すでに楽天グループが一部の事業で導入を検討するなど、広がりを見せつつある。
 APIの導入によって、多様な産業分野の事業者が「デジタルアドレス」を住所に変換することができ、日本郵便以外のサービスでも、「デジタルアドレス」を簡単に利用できるようになる。将来的には、個人ユーザーだけでなく、事業者が抱える住所課題を解決するよう、新しい住所の仕組みとして提案していく。
 現時点では、基本的なサービスや製品は無料で提供し、高度な機能や特別な機能については利用料を課金する、「フリーミアムモデル」での企業向け事業展開を検討している。
 郵便番号同様、公共性の高いものとして、ヤマト運輸や佐川急便を含めた様々な物流企業にも無料で提供し、デジタルアドレスが社会インフラになることを目指す。今後、より高度なサービス・機能の提供が可能になった場合には、無料または有料での提供を検討していく。
 デジタルアドレスの削除・再取得が可能で、住所変更しても同じデジタルアドレスを保有することができる。また、同じ住所に住む家族などが、それぞれ別のデジタルアドレスを取得できるのも大きな特徴だ。
 
 同日、ウェブ会見が開かれ、日本郵便DX戦略部の財前幸一郎部長と西郷佐知子担当部長が概要を説明した。
 財前部長は「新サービスについては、住所に関するDX施策と考えている。われわれ日本郵便は、日々全国3000万の住所に郵便物や荷物を配達しており、それだけに日本の住所が抱える課題に悩まされることもある。こうした課題に対して、われわれなりにアプローチができないかという考えのもと新サービス提供となった」としたうえで、「ユーザーが増えデジタルアドレスが普及することによって、より便利になったり、社会課題解決の恩恵の裾野が広がっていくものと考えている」と述べた。
 西郷担当部長は「郵便・物流だけではなく、住所そのものが生活に根差しているものだと思う。ECや小売り、医療、携帯電話、通信、ゴルフ場・旅館・ホテルのチェックインなど、様々なところで住所情報を求められる機会がある」とした。
 また「住所情報を求められる世界において、日本郵便だからこそ、デジタルアドレスを構成する住所が正確かつ最新であり、緯度経度情報などのプラスαの情報を価値として付加することによって、一般ユーザーや企業にとって、住所情報が扱いやすくなる世界を目指したい」と抱負を語った。
 さらに「手紙がメールになり、電話がチャットになり、コロナ禍では現金が電子決済になった。従来の手段がDX化することによって、より付加価値の高いサービスに代わっていると思う。住所もDX化することによって、デジタルアドレスを通じて、新たな付加価値を提供し、便利な未来を築いていくことに挑戦していきたい」と述べた。
 「郵便物などの宛名にデジタルアドレスを記すだけで配達が可能になるのか」との記者の問いに対して、財前部長は「将来的に、スマートグラスなどのデバイスが一般化し、デジタルアドレスを見ると住所情報などが浮かんでくるという世界が実現すると思っている」と回答した。
 西郷担当部長は、「デジタルアドレスによって、ユーザーが持つ住所に関わる不便を解決し、4つの価値を提供していきたい」と述べ、以下の価値を解説した。
 ①長い住所でも書くのが楽=様々な場面で記載を求められる住所情報。長い住所や漢字が難しい住所であっても7ケタのデジタルアドレスを書くだけ・在日/訪日外国人、手書きが難しくなってきた高齢者にとっても住所の扱いが楽に②同日導入したSPIによりPCでもスマホでも入力が楽=郵便番号同様、デジタルアドレスで住所のすべてを自動入力・タクシーやカーナビ等の入力も簡単に③送る/受け取るが楽=住所情報の精度が上がることにより最新かつ正しい住所で間違いのない配達が可能に・ドローンや無人配送など、受け取り方の選択肢が増える④引っ越しても住所変更が楽=日本郵便で転居届を出せばデジタルアドレスの住所も一緒に変更・デジタルアドレスを利用サービスと紐づけておくことで引っ越しにともなう住所変更の手間を軽減。
 また、事業者への提供価値を4つ示した。
 ①顧客の住所を取得するのが楽=各種申し込みや手続き等で住所の記載・入力を求める際の顧客の煩わしさを解消しCS(顧客満足度)向上に貢献・読みづらい住所や省略しがちなマンション名や部屋番号も取得。
 ②顧客の住所をメンテナンスするのが楽=デジタルアドレスによって住所表記のゆれへの対応や名寄せが可能に。住所の管理や変更にかかっていた工数を削減・デジタルアドレスを付加することで住所情報の最新化、データ活用が可能に。
 ③利用目的に合わせて発行・管理するのが楽=事業者として法人デジタルアドレス取得可能に。自宅兼事務所といった送付物管理を楽に・部署ごと、キャンペーンや書類回収など用途ごとに目的別でデジタルアドレスを払い出すことが可能。
 ④住所の共有が楽=位置情報等の付与により、入り口や駐車場といった情報の共有が楽に・地図サービスやSNS、ガイドブックなどに記載し顧客の来店/来社促進に・頭文字3つを選べるブランドデジアドなら、企業のブランディングも可能。
 最後に、デジタルアドレスのロードマップとして4つのステージを示した。
 ステージ「1・0」(初期導入と認知拡大)=個人/法人向けデジタルアドレスの導入を図る。ステージ「2・0」(住所の正規化と高付加価値化)=デジタルアドレスをインターフェースとして正規化された住所の普及を図る。ステージ「3・0」(郵便・物流の高度化と社会浸透)=デジタルアドレスによる郵便・物流事業/物流業界への貢献を図る。ステージ「4・0」(社会インフラ化と新たなイノベーションの創出)=デジタルアドレスを基盤とした社会生活と技術革新による新サービスの創出を、様々な産業の企業とともに目指す。


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