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2026年2月9日 第7339号

【主な記事】

「デジタルアドレス」普及へ
産学官の連携 制度検討や実証実験

参加企業の皆さん(左から5人目は小池社長)


 日本郵便は1月23日、アパグループ、アフラック生命保険、楽天グループなどとともに、住所の課題を解決することを目的に、共創型コンソーシアム「デジタルアドレス・オープンイノベーション」を発足した。7桁の英数字で住所を識別できる「デジタルアドレス」の普及を目指す。
 
 日本郵便が2025年5月から提供している「デジタルアドレス」は、「ゆうID」に登録している住所を7桁の英数字に変換し、住所の全文(郵便番号、都道府県、町域、建物情報など)を簡易にすることで、住所入力の簡略化や各種サービスの利便性向上を図るもの。
 背景には、ITの普及によるWebでの住所入力機会やEC(電子商取引)による配送の増加など、住所の使われ方が少しずつ変化し、より柔軟で簡便な運用へのニーズが高まっていることにある。日本郵便は住所にまつわるこうした課題を解決し、「住所を、もっと便利に」のコンセプトで「住所のDX」に取り組んでいる。
 このサービスにより、長い住所を手書きしたりWebサイトで入力する必要がなくなり、入力する手間の削減や誤記入・誤入力の心配がなくなる。また住所そのものではなく、個人のゆうIDに紐づいているため、引っ越しなどで住所が変更になった場合も、登録してある住所を変更するだけで引き続き同一のデジタルアドレスを使用することができる。送り状などに使用した場合、外見上住所そのものが見えないため、個人情報の保護にも貢献する。
 1月23日に日本郵政グループ本社で行われた「デジタルアドレス・オープンイノベーション」発足発表会には、日本郵便の小池信也社長のほか、共創パートナーとして産業界から、アパグループの元谷一志社長兼CEO、アフラック生命の古出眞敏社長、GMOメイクショップの向畑憲良社長、セールスフォース・ジャパンの田村英則統括本部長、PackcityJapanの柳田晃嗣社長兼CEO、楽天グループの松村亮専務執行役員が出席、学術機関からは東京大学空間情報科学研究センターの関本義秀センター長が出席した。
 小池社長は「住所は社会のあらゆる場面で使われる、きわめて重要な情報基盤。しかし社会のデジタル化にともない、住所の在り方が最適化されていないという課題がある。正しい住所をいかに社会に浸透させて標準化させるか、社会全体で取り組む必要がある。デジタルアドレスは、住所情報を起点とした手続きの効率化にとどまらず、様々な可能性を持っている。このコンソーシアム設立で、住所にまつわる諸課題を共有し、その解決に向けて検証していくことで、住所の未来を共創していきたい」と述べた。
 日本郵便DX戦略部の財前幸一郎部長は「住所は郵便に限らず、行政、金融、宿泊など多様な場面で使用される非常に重要な情報。しかし引っ越した際など新しい住所への更新が漏れたり、同じ住所でもデータの不整合を起こしたりなど多くの課題が生じている。デジタルアドレスは住所のイノベーションであるが、日本郵便だけで住所に係る問題をすべて解決することは不可能。産・学・官で連携した共創型コンソーシアムにより便利な未来を構築していきたい」と将来への展望を語った。
 コンソーシアムは、様々な分野の代表的な企業や研究機関、行政・自治体などと連携し、デジタルアドレスの実用化に向けた実証実験や活用事例の創出を共同で行っていく。2026年度は「EC・物流業界」「金融・保険業界」「宿泊・観光業界」を重点業界としている。
 続いて行われたトークセッションでは、日本郵便DX戦略部の西郷佐知子担当部長の司会のもと、ECサイト関連会社、宅配ボックス運営会社、ホテルの自動チェックイン機開発会社など、各事業者の立場から住所に係る課題点やデジタルアドレスへの意見交換が行われた。
 課題としては、利用者からは「長々と住所を書くのが面倒」「住所を教えたくない」「置き配の場合、住所が丸出しのまま玄関先に置かれる」などが課題である一方、事業者からは「住所の表記が間違っている」「住所情報の信用があやしい(実在する?空き家?)」「正確な位置が住所だけでは分からない」などが挙げられた。
 例えば大きな駅や大学、広大な農地や工場でも住所はひとつしかないため、住所だけではその中のどの地点を指しているのか特定できない。また、住宅街でも、隣の家と自分の家の住所が同じ場合があり、誤配達される可能性もある。こうした問題を、最も住所を把握している日本郵便が自社のアセットを生かして解決に取り組み、将来的にはデジタルアドレスに緯度と経度の情報を付与して、ピンポイントで場所を特定する機能を持たせることも検討されている。
 これまで当たり前のインフラだった手紙がメールへ、電話がチャットへ、現金が電子決済に変化していくのと同様、住所はデジタルアドレスへ変わっていくことで、社会の利便性が向上するとともに、大きなイノベーションの流れができることが期待される。


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