「通信文化新報」特集記事詳細
2026年7月20日 第7362号
【主な記事】
日本郵政根岸社長 地域貢献を強化
ユニバーサルサービス 確実に提供
別府市公会堂の指定管理者に
日本郵政の根岸一行社長は6月30日、東京都千代田区丸の内のJPタワーホール&カンファレンスで定例会見を開いた。JPプラン2028に掲げている内容についての進捗状況を公表したうえで、6月19日に可決成立した改正郵政民営化法に関する考えを述べた。2027年度実施を視野に入れた郵便料金の値上げについては、年間650億円程度の新たな交付金で上げ幅が縮小する可能性に言及するとともに、「日本郵便の徹底した経営効率化と、引き続きユニバーサルサービスの確実な提供が重要」と強調した。
根岸社長は冒頭、トナミホールディングとの協業の進捗と新拠点の開設について説明。トナミとJPロジスティクスとの間で中継輸送を拡大し、特積みのネットワーク連携、共同配達による集配業務の効率化などを進めており、日本郵便が中期経営計画に掲げた総合物流企業への転換には、こうした協業の継続は不可欠とした。
特にグループ一体での物流機能の拡充強化や、人手不足問題に対応するため、JPロジスティクスやトナミの施設共同化の推進が重要と語った。トナミホールディングスのJPグループ加入後の今年の3月期実績として、営業収益は1639億円、営業利益は75億円。2029年3月期は、営業収益1800億円、営業利益90億円を目指す。
また、協業取り組みの一つとして、トナミ運輸横浜支店とJPロジスティクス横浜支店を統合し、6月22日に横浜市金沢区に新横浜事業所を開設した、と明らかにした。
生活サポートプラットフォームとしての郵便局の取り組みについては、日本郵便とポプラ社が連携し、7月22日から福島県内の4つの郵便局で児童書を試行販売すると述べた。背景には、近年全国的な書店の減少により書籍に接する機会が減少しており、地域の文化環境や生活レベルが低下することへの危惧がある。根岸社長はこの試行が、同時に東日本大震災の被災地域における復興の一助になるとの考えを示した。
また自治体との連携事業として、来年4月から別府市公会堂の指定管理者としての業務を開始すると述べた。日本郵便として初めて公の施設の指定管理業務を受託することとなり、公会堂の中に郵便局を移転して指定管理業務を行う。
その他、集落支援員業務については昨年度から受託を開始し、現在6自治体14郵便局で受託していると説明。集落支援員業務は地域の状況に精通している郵便局長との親和性が高いため、地域貢献の観点からも今後拡大するとの意向を示した。また、郵便局で行っている「郵便局の終活日和」や郵便局社員による「空き家みまもり」サービスも利用者が拡大しており、根岸社長は「郵便・物流、金融といった基盤事業に加えて生活サポートを展開し、郵便局が一層地域に必要とされる存在になるよう取り組んでいく」と述べた。
利用者の利便性向上への取り組みとして、デジタルアドレスを活用した多様な受け取り方法の普及促進にも言及した。現状では、EC事業者が自宅外受け取りサービスを利用するにはEC事業者ごとにUI(ユーザーインターフェイス)設計等を行う必要がありハードルが高い。住所を7桁の英数字で表現するデジタルアドレスをキーとした配送連携ハブにすることで、多様な受け取り方法が可能になるよう取り組んでいく方針だ。
◇ ◇ ◇
〈質問に対する回答要旨〉
■改正郵便法と郵政民営化法改正が可決成立したが受けとめは。
郵便料金のあり方については、従来から主体的かつ機動的に料金改定できるよう要望をしてきた。その要望が反映された法律が成立したことを歓迎する。
改正民営化法は、ユニバーサルサービスを確実に提供し、郵便局ネットワークによる地域住民の生活支援を目的としたものと思う。引き続き緊張感を持って経営効率化を含め、法律に沿って事業を展開していく。
外部環境については、人口減少やデジタル化の進行等で郵便の減少が続き、この傾向は今後も続くと見込まれる。こうした状況の中で徹底的なコスト削減と収益拡大に努め、自主的な構造改革と効率化を進めていく。
■日本郵便が650億円の交付金を受けるが、ユニバーサルサービスの中でどのように活用するのか。また新たに取り組むことは。
地域への貢献業務が本来業務に位置付けられたので、相対的に都市部より地方の様々なニーズを踏まえた対応をしていく。これまで以上に積極的に地域の方々に働きかけニーズを満たすよう取り組んでいく。
また、メニューはいろいろある中で、点で推進するより面で広げていく必要がある。今後、新しいサービスの議論は出てくると思うが、適切に地域のニーズを捉えて幅広く対応していく。
■交付金が入ることによって、JPプラン2028を見直す考えは。
650億円が日本郵政や日本郵便の利益として積み上がるものではないので、直ちに見直すことにはならない。よく制度設計を見たうえで判断したい。
■金融2社の一定の株式を保有することが明記されたが、経営への影響は。
ユニバーサルサービスの持続的な確保の状況を踏まえたうえで対応するので、現時点でただちに対応することはない。一定期間経過した時点で対応する。
■基盤的サービスの提供が日本郵便の本来業務に追加されたが、法案作成に関わった議員からは「郵政四事業」の時代になったとの声もある。
本来業務になったことで、郵便、貯金、保険の次に来る重要な事業に位置付けられたと思う。中計の中でも郵便・物流と金融、生活サポートとも考え方が一致するので、言葉の定義付けは難しいが重要な位置づけであると認識している。
■民営化法の改正は、日本郵政グループにとって、大きな変化だと思う。地域貢献も努力義務となったが、今後の会社としての方向性は。
地域貢献が法律で位置づけられたので、改めてこういったことに積極的に取り組む必要があると思う。これまでも中期経営計画で生活サポート・生活支援ということで、その方向感ということでは変わることはない。日本郵便には業務の効率化が明確に求められているので、そういう要請にきちんとお応えをすべく、緊張感を持ってしっかり取り組む姿勢を改めて再認識している。
■「新交付金制度」や「地域貢献基金」といった新たな財源が明記されたことは、大きい。特に地域貢献基金の創設により、郵便局が地域とより密接に関われる機会が増えると思う。活動財源を郵便局が得ることにより、「地域のためになるが、採算が取れなくてできなかったこと」についても一定程度できるようになるのではないかと期待している。基金などを使ってどのようなことができるのか。
具体的にどういったスキームでどのようなことができるか、ということは検証していかなければならない。今までのラインとは違ったラインで、今まではやらなかったことも出てくると思う。業務の手間も含めて、できることを見極めて、具体的な事例を積み上げていきたい。地域貢献は法律で位置づけられた訳で、従来と同じレベルではないと思う。具体的なことを探っていきたい。
■郵便局長は地域のために、いろんなボランティア活動をやっているが、かかるコストへの支援はあるのか。
どのような形式のものか。集落支援のようなものであると思うが、どういった活動であれば、事業(業務)なのか。一方で窓口の業務に差しさわりがあるのなら本末転倒。どういう事例が収支に沿い、かつ、これまでの事業との間で成長ができるか、具体例を積み上げていきたい。その積み上げに関しては、実際に郵便局で働いている人と相談していく必要がある。
■昔の郵便局は、地域のちょっとしたお手伝いができていたのに、今はできなくなった。郵政民営化法の改正で、役割と資金が担保されたこともあり、郵便局は人と人とが関われる温かみのある拠点になるのが良いのではないかと思うが。
お客さまニーズという点で言うと、我々の業務はここだからという杓子定規が良いわけではない。地域で生活をする中でそれが良いことか、ということもあると思う。
一方で、業務として切り分けなければならないこともある。温かみの部分と業務として正確にやらなければならない部分がある。確かに忘れていることもあると思う。普段、地域の方と接している社員とコミュニケーションを取らなければ、回答が出てこないと思う。そんなところをこれから吟味していきたい。
■郵便法改正に伴う郵便料金の改定は。
日本郵便で効率化をしたうえで、結果として料金値上げの時期が決まるので、まずは効率化にしっかりと取り組んでいく。
■窓口の営業時間の短縮が推進されているが、その短縮分を地域活動等への従事に割り当てる考えは。
地域の状況に応じて時間の使い方があるが、そういう使い方もあり得る。個々の地域によって事情が違うので、よく地域の郵便局と相談して決めることになる。
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